360度評価とは
360度評価とは、対象となる本人と、周りの職場仲間(上司・同僚・部下など)が、本人の日頃の職務行動や職務の遂行能力(コンピテンシー)などを評価・診断し、結果をレポートにまとめてフィードバックする手法です。
従来の「上司(だけ)が部下を評価する」という手法とは異なり、多様な視点からの客観的な評価であるため、より多くの気づきや有益な情報を得ることができます。
「360度評価」以外にも「360度フィードバック」「多面評価」「360度診断」「360度サーベイ」「マルチレイター・フィードバック」などと呼ばれます。
360度評価をなぜ実施するのか
360度評価は、組織のリーダーや管理職を主な対象に※1、本人の成長や能力開発、人事考課などに役立てるため実施されます。
リーダーシップ教育で世界的に有名なアメリカの教育・研究機関CCL(Center for Creative Leadership)は、人は経験から学び成長するが、下図の3要素(「評価」「チャレンジ」「サポート」)が経験に含まれると効果的であると研究報告しています※2。
360度評価は3要素の「評価」に該当し、本人の成長を強力に後押しします。
※1 部下を持たない一般職層の利用は10%程度との報告もあります。
個人の行動の変化
360度評価を通じて、自分の客観的な評価を知り、進むべき方向性を明らかにすることができるため行動変化につながります。
パフォーマンスの向上
求められる能力やスキルを習得し、より効果的な行動をとろうという意志が呼び起こされるため、個人のパフォーマンス向上につながる。
自己評価と
周りの評価の一致
自身に対する間違った認識や勘違いがなくなり、自己の認識と周囲の認識が近づき、より的確に自分を把握できる。
本人の自信の醸成
日常では得られない、周囲、中でも同僚や部下からの正式なフィードバックが得られるため、「周りからどう評価されているのか」という不安が解消され自信につながる。
研修や能力開発の機会への本人の態度
能力開発に対する意識が高まり、研修やトレーニングなどの機会に対する姿勢が変わる。
本人の評価に対する
納得感の向上
日頃仕事で接する仲間からの客観的な評価であり、公平性が高いため、本人が納得感を得やすい。
※2 McCauley, C. D., & Van Velsor, E. (Eds.) (2004). The Center for Creative Leadership handbook of leadership development (2nd ed.). San Francisco: Jossey-Bass
360度評価のよくある実施目的
360度評価の実施は、「能力開発目的」と「管理目的(人事考課、昇進・昇格などの参考資料)」に大別されます。
多くは「能力開発目的」ですが、時代の要請から「管理目的」も増えています。
お客様の声をまとめると、次のような目的で導入されています。
あるべき姿の習得、現状と能力開発のポイント把握
管理職やリーダーなど、職務上求められる行動や能力を学ぶ。
また、自身の現状を把握し、あるべき姿と対比して能力開発のポイントを明らかにする。
企業側のメッセージ
企業の目標や目的を達成するため、社員に求める行動や能力・スキルを、明確なメッセージとして伝えて浸透させる。
研修やコーチング等の効果を高めるツール
対象者の研修やコーチングへの意欲を高める。また、研修やコーチングの後のフォローアップに役立てる。
昇進昇格の参考資料
管理職やリーダーへの登用や選抜の参考資料として、多様な視点からの意見を取り入れる。
客観性のある評価の仕組み
上司だけでなく、対象者の日常をよく知る同僚や部下などの視点を加えて、より客観的な評価を行う。
刺激となるフィードバック
360度評価により、常に適度な刺激やプレッシャーを与え、モチベーションや緊張感を継続させる。