従業員満足度調査の「質問テンプレート」をアンケート項目と共に紹介

従業員満足度調査(ES調査)は、従業員満足度の向上や組織の活性化に活用できる効果的な調査ツールです。継続的に実施することで、「従業員満足度の向上→組織の活性化→顧客満足度の向上」にまでつながる好循環を形成することができます。

この従業員満足度調査で鍵となるのが、「どのような内容をどう問うのか」という「アンケート項目」や「質問」です。アンケート項目や質問の設定次第では、「期待した効果が得られなかった」「意味がない」といったことにもなりかねません。

そこで今回は、従業員満足度調査の質問に関するテンプレートを、アンケート項目と共に紹介します。従業員満足度調査の実施を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

【この記事で得られる従業員満足度調査の情報】

・アンケート項目や質問の作成ポイント
・アンケート項目のサンプル
・質問のテンプレート
・自由記述に関する注意点  

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

従業員満足度調査「アンケート項目」と「質問」の作成ポイント

まずは、アンケート項目と質問の作成ポイントについて見ていきましょう。作成する際は、次のポイントを押さえます。

【アンケート項目と質問の作成ポイント】

・調査領域を定義する
・動機づけ要因と衛生要因を意識する
・分かりやすい表現を使う
・適切な質問数を設定する
・回答は選択式と自由記述式で構成する
・選択肢のバランスに注意する
・匿名性を担保する

ひとつずつ、詳しく解説します。

調査領域を定義する

アンケート項目を作成するには、従業員満足度調査によって何を測定するのか「調査領域を定義」する必要があります。従業員満足度調査の実施には、相応の目的があるはずです。その目的の領域(給与・労働条件・人間関係・仕事内容・達成感・昇進昇格など)を明確にします

調査領域を定義することで、アンケート項目の方向性が定まります。ブレのないアンケート項目は、調査に取り組む従業員の納得感を高め、精度の高い回答を集めることにつながるのです。

動機づけ要因と衛生要因を意識する

「動機づけ要因」とは、仕事の「満足」に関わる要因です。具体的には、「達成感・仕事内容・昇進昇格・裁量権・成長機会」などが主な構成要素となります。一方「衛生要因」とは、仕事の「不満」に関わる要因です。具体的には、「給与・労働条件・福利厚生・経営方針・人間関係」などが主な構成要素です。

従業員満足度調査のアンケート項目を決める際は、この動機づけ要因と衛生要因を意識します動機づけ要因を意識した項目で仕事に対する意欲や熱意を確認し、衛生要因を意識した項目で職場環境に対する不安要素を確認します。 

分かりやすい表現を使う

アンケート項目に関する質問は、「分かりやすい表現」を使うようにしましょう。回答のしやすさは、従業員の時間的・心理的な負担を軽減します。質問を工夫すると共に簡単に回答できる方法を取り入れ、調査に取り組む従業員のハードルを下げ、本音を引き出しやすくします

また、誘導するような質問では正確性を欠き、偏った調査結果になりかねません質問は、中立性が不可欠です。分かりやすい表現で中立性を保つことが、信頼性の高い調査結果につながるのです。

適切な質問数を設定する

「適切な質問数を設定する」ことも、重要なポイントです。質問数が多すぎると従業員の負担感が増し、調査結果の質が低くなってしまう恐れがあります。こうなると、従業員満足度調査を実施しても思うような成果が得られなくなります。

質問数は、「多すぎず少なすぎず」を意識して設定しましょう。具体的な質問数は、20~50問。回答に要する時間的な目安は、15分~25分が基本です。

回答は選択式と自由記述式で構成する

質問への回答は、「選択式と自由記述式」で構成します。選択式の回答は、4~6段階とするのが一般的です。選択式は、「どちらともいえない」に回答が集中する恐れがあります。この「中心化傾向」を避けたい場合は、偶数段階での回答を設定しましょう。

選択式の回答を補完する自由記述形式を加えることで、従業員の生の声を拾い上げることが可能になり、調査結果がより具体的になります。ただ、「自由記述のコメントの書き方が分からない」といった声もあるため、説明会を開くなど事前準備が必要になります。

選択肢のバランスに注意する

回答に対する「選択肢のバランス」に注意します。選択肢が偏っていては、従業員の本音が反映されず調査結果の精度が低くなってしまいます。選択肢は、「肯定的・否定的」の両方を均等に設定し、様々な意見を収集できるようにします。

選択肢のバランスに注意することで、調査結果の精度が高まると共に、従業員の本音を引き出すことにつながるのです。

匿名性を担保する

従業員の「匿名性を担保する」ことが、従業員満足度調査を実施する際には不可欠です。本音を安心して回答できる環境こそが、従業員満足度調査のベースといっても過言ではありません。「人事考課や人間関係に影響するのでは…」といった不安を払拭するためにも、匿名性の担保は必須なのです。

従業員満足度調査は、「失敗しない環境作り」が極めて重要です。そのためには、従業員満足度調査の目的や結果の活用方法を共有すると共に、匿名性を担保することが必要不可欠といえるでしょう。

関連記事:従業員満足度調査とは? 

従業員満足度調査「アンケート項目」のサンプル

それでは、従業員満足度調査の「アンケート項目」を具体的に紹介します。従業員満足度調査のアンケート項目は、「全体満足」と「領域別満足」の2つから成り立っています。それぞれ、詳しく解説しましょう。

全体満足

全体満足とは、従業員の組織や仕事に対する総合的な「感情・態度」を表すものです。全体満足は、従業員満足度調査の中核となるアンケート項目であり、データを比較する際のベンチマークとなるものです。経年変化の確認や全国平均との比較にも活用できます。

従業員の全体的(総合的)な満足度を調査することで、組織と仕事の全体に対する満足感や感じ方を把握することができるのです。

具体的アンケート項目
組織・仕事・働きがい・将来性・製品・サービス・コミュニケーションなど 

領域別満足

領域別満足とは、従業員の組織や仕事の様々な領域に対する「感情・態度」を表すものです。領域別満足は、メリーランド大学の心理学者エドウィン・ロック教授の研究結果から、「仕事内容」「組織」「職場仲間」「待遇」の4つの領域に分類されます

領域別満足を調査することで、「従業員がどの領域に満足し、どこに不満を感じているのか、自社の強みや弱みは、どの領域にあるのか」といった情報を把握することができます

では領域別満足のアンケート項目を、「仕事内容」「組織」「職場仲間」「待遇」の4つの領域ごとに詳しく見ていきましょう。 

仕事内容

自分が行う「仕事内容」に関して、従業員がどのように感じているのかを確認する項目です。この項目の満足度の度合いは、意欲的に仕事に向き合う姿勢を表します

具体的アンケート項目
意義と責任・能力の活用・成長の実感・自律性・仕事の多様性・フィードバックなど

組織

自分が属する「組織」に関して、従業員がどのように感じているのかを確認する項目です。この項目の満足度の度合いは、組織が掲げるビジョンや目標にコミットできているのかを表します

具体的アンケート項目
経営方針・意思決定・闊達な風土・変革の風土・顧客志向・情報伝達・組織の倫理観やモラルなど

職場仲間

自分がかかわる「職場仲間」に関して、従業員がどのように感じているのかを確認する項目です。この項目の満足度の度合いは、理念を理解した上で主体的に仕事に取り組み、チームワークが取れているのかを表します

具体的アンケート項目
経営者・上司・部署内の連携・部署の成長努力・部署間の連携など

待遇

自分が働く「待遇」に関して、従業員がどのように感じているのかを確認する項目です。「働く環境」も含まれます。この項目の満足度の度合いは、待遇面や働く環境について納得感を持っているのかを表します

具体的アンケート項目
給与・評価と褒賞・昇進と昇格・福利厚生・能力開発の機会・働く環境・仕事の負荷・雇用の安心感など

関連記事:従業員満足度調査の質問項目と例文について   

従業員満足度調査の質問例~テンプレートを紹介

資料

ここからは、従業員満足度調査の具体的な質問例を紹介します。テンプレートとしての活用が可能です。

全体満足に関する質問

全体満足に関する質問テンプレートを紹介します。

【全体満足の質問テンプレート】

・大体のところ今の組織に満足している
・全体的に考えて今の仕事が好きである
・大体のところ今の会社の将来性に期待している
・全体的に今の仕事に働きがいを感じている
・大体のところ今の会社の製品やサービスに誇りを持っている
・全体的に今の会社の社会貢献に満足している  

仕事内容に関する質問

領域別満足「仕事内容」に関する質問テンプレートを紹介します。

【仕事内容の質問テンプレート】

・今の仕事は会社の目標と結びついている
・自分の得意分野を活かす機会がある
・組織内で多様性に対する取り組みができている
・今の仕事に意義や責任を感じている
・仕事に対するフィードバックを受けることができている
・自分の意見や価値観を仕事や組織に反映できている 

組織に関する質問

領域別満足「組織」に関する質問テンプレートを紹介します。

【組織の質問テンプレート】

・会社の経営方針に共感できている
・従業員の意見や考えを会社は真剣に聞いてくれる
・今の仕事が顧客や社会のためになっていると感じている
・組織風土やイノベーションへの取り組みに満足している
・会社の戦略や方向性が明確に伝えられている
・会社は顧客の満足度を高める施策に取り組んでいる

職場仲間に関する質問

領域別満足「職場仲間」に関する質問テンプレートを紹介します。

【職場仲間の質問テンプレート】

・経営者はビジョンやパーパスを従業員にわかりやすく伝えている
・上司は仕事の段取りや計画を適切に行っている
・部署間で業務上必要な連携がとれている
・チーム同士が成長に向けてサポートし合えている
・先輩や同僚、後輩との関係性が良好に保たれている
・上司は部下の成長を促しフォローを適切に行っている 

待遇に関する質問

領域別満足「待遇」に関する質問テンプレートを紹介します。

【待遇の質問テンプレート】

・今の仕事に見合った給料を得ることができている
・今の仕事量は適切だと感じている
・仕事に必要な研修や教育を受けることができている
・評価は適切であり待遇に反映されていると感じている
・健康やワークライフバランスを意識した取り組みが行われている
・会社は従業員のキャリア形成について相談できる窓口や機会を作っている

「ソシキビト」を運営するリアルワンでは、従業員満足度調査の質問テンプレートをご用意しています。以下のリンクからダウンロードが可能です。ぜひご活用ください。

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従業員満足度調査の自由記述について

先述の通り、選択式の回答でカバーしきれない意見や要望については、「自由記述欄」にコメントしてもらうことで、従業員の声を広く吸い上げることができます。自由記述欄へのコメントによって、想定外の問題点や懸念事項が浮き彫りになることも少なくありません。調査の際は少なくともひとつ、自由記述を求めるコメント欄を設定しましょう。

ただし、ネガティブなコメントが集中してしまう恐れがあるのも事実です。これを回避するには、自由記述欄の質問を工夫すること、また「組織に対する期待」や「建設的で具体的な意見」がコメントできるように、事前研修を実施する必要があります。先に述べた、「コメントの書き方が分からない」といった声をクリアするためにも、事前研修は必須の取り組みといえるでしょう。

自由記述をうまく活用することによって、定量的なデータだけではなく定性的なデータも集まり、従業員満足度調査がより効果的なものになっていくのです。

【自由記述欄の質問テンプレート】

・あなたが仕事のやりがいを感じるのはどのようなときですか
・あなたが仕事の喜びを感じるのはどのようなときですか
・あなたが感じる仕事上の問題点について解決策を提案してください
・従業員の声を活かしていくにはどうしたらよいと思いますか
・あなたが考える会社の強みや弱みを具体的に書いてください

関連記事:従業員満足度調査を実施する際の注意点  

最後に

従業員満足度調査は、組織や仕事の課題を浮き彫りにして、課題解決のアクションプランを策定するために極めて有効なツールです。その一方で、アンケート項目や質問を適切に設定するのが難しいといった問題があります。この問題をクリアするには、やはり専門の調査会社に依頼することをお勧めします

リアルワン株式会社は、100万人超の利用実績を持つ調査・評価の専門会社です。第一線の研究者が監修する「従業員満足度調査は、信頼性・妥当性が担保されたツールとして多くの企業様に導入されています。様々な業界や業種で採用されたアンケート項目や質問によって、組織の状態を明確にし「経営指標」として従業員や組織の活力を映し出します

実施・運用の際は、専門スタッフがトータルでサポート。匿名性の担保に関するノウハウも万全です。従業員満足度調査の導入を検討されている担当者の方は、ぜひリアルワン株式会社にご相談ください。

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