360度評価の導入率はどれくらい?活用目的や期待できること・欠点を解説

「上司が部下を評価する」従来型の人事評価とは一線を画す「360度評価」が注目されています。では実際、360度評価の導入率はどれくらいなのでしょうか。

今回は、調査データの数字を紹介しながら360度評価を深掘りします。360度評価の導入を検討されている方、360度評価の活用目的や期待できること・欠点について知りたい方は必読の内容です。

▼本記事で得られる360度評価の情報

・実施率や活用に関する調査データ
・従来型人事評価システムとの違いや強み
・期待できることや欠点
・評価対象者や評価者について     

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

360度評価とは?従来型人事評価との違い・強み

360度評価とは、従業員の行動や能力を「上司・部下・同僚・他部署の従業員」といった様々な立場の協力者が評価する、新しい人事評価の手法です。評価ケース次第では、「取引先の従業員」を評価協力者に含む場合もあります。

従来型の人事評価は、上司が部下を評価するという「上司の一方向的な視点」で行われるのが一般的です。しかし、評価の視点が一方向であるがゆえ「公平性に欠ける」「上司の主観が入りやすい」「相性の悪い上司の評価に不安を感じる」といった問題点を抱えていました。

360度評価は、様々な従業員が多面的な視点から評価するため「多面評価」とも呼ばれ、従来型の人事評価とは一線を画しています。多面的な視点を評価に取り入れることで、公平かつ的確な評価を実現し、従業員の成長や組織の活性化を図れる大きな強みを持っています

関連記事:360度評価とは?導入する目的やメリット・デメリット、項目を解説

360度評価の導入率

それでは、360度評価の導入率を紹介しましょう。数字は、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2020年に行った調査結果(※)をもとにしています。

調査結果を見ると、「現在実施しており、今後も継続していく予定:23.2%」「現在実施しているが、今後は実施しない予定:2.7%」「現在実施しているが、今後はわからない:5.5%」となっており、現在31.4%の企業が360度評価を導入しています。

また、「今後実施する予定:2.3%」「今後実施してみたい:24.9%」という企業の合計は50.4%にのぼり、半数以上の企業が360度評価の導入に前向きです。

※ 2020年 企業の人事担当者 600 名に対する「360 度評価活用における実態調査」より 

出典元:リクルートマネジメントソリューションズ(2020)

360度評価は、従業員の成長や組織の活性化を図ることが大きな目的です。ひいてはそれが、従業員満足度やエンゲージメントの向上にもつながります

人材獲得競争が厳しさを増すなか、従業員の成長と組織の活性化を考えることは、人材の獲得や定着を図る上でも極めて重要な取り組みといえるでしょう。

関連記事:従業員満足度が高い職場環境とは  

360度評価の活用目的

さらに、同調査による360度調査の活用目的を見てみましょう。

「人事評価に反映している」との回答は、54.5%となっています。これまで、「評価結果を人事考課に反映しない」というのが360度評価を成功させるポイントのひとつでしたが、最近は反映させる企業が増えているようです。ただし、人事考課に反映させるための環境整備が必要であることは言うまでもありません。

その一方で、「対象者本人の気付き・育成に活用している:35.3%」「上司のマネジメント・コミュニケーションツールとして活用している:20.2%」といった結果もでており、人材育成やコミュニケーションの活性化を目的として導入する企業が多い状況も見てとれます。

出典元:リクルートマネジメントソリューションズ(2020)

360度評価は、「やりっぱなし」では意味がありません。評価結果から課題を設定し行動変容につなげるためには、1on1ミーティングなどでフィードバックを行い、評価対象者をフォローしていく必要があります

従業員満足度やエンゲージメントを高めるためにも、360度評価は、実施と共に実施後が重要であるとの認識を企業内で共有しておきましょう

関連記事:従業員満足度を向上させるメリット

360度評価とはどのような評価制度?

ここでは、360度評価とはどのような評価制度なのかを整理してみましょう。

期待できること(メリット)

360度評価で「期待できること・メリット」とはどのようなものでしょうか。

【360度評価の導入で期待できること・メリット】

・公平で客観的な評価の実現
・評価に対する納得感の醸成
・自分を客観視する意識の促進
・人材特性の正確な把握
・組織が内包する課題の早期発見

360度評価は、様々な視点で評価を行います。公平かつ客観的な評価は、従業員の納得感を高めるでしょう。周囲からのフィードバックは評価対象者に多くの気づきを促し、自分を客観視することにつながります。また会社にとっても、人材特性の把握や隠れた組織課題の早期発見に役立つのです。 

欠点(デメリット)

では「欠点・デメリット」とは、どのようなものでしょうか。

【360度評価の欠点・デメリット】

・主観的な評価になりやすい
・評価に対する忖度が懸念される
・人間関係の悪化を招く恐れがある
・「人・時間・費用」といったコストが発生する
・運用次第では結果が伴わない

評価者の中には、評価すること自体に慣れていない従業員もいます。360度評価に対する理解が深まっていないと、評価が主観的になりやすく、評価者の好き嫌いや思い込みによって評価に忖度が入る可能性があります

偏った評価は、人間関係に影響を及ぼしかねません。また運用を誤った場合、思うような結果が得られないことや、様々なコストが発生することも欠点といえるでしょう。

評価の対象者は誰か

360度評価は、全従業員が評価の対象者になります。とはいえ、調査データからは一定の傾向が見えてきます。引き続き、リクルートマネジメントソリューションズが行った調査結果を紹介しましょう。

評価対象者で一番多かったのは「課長層:62.5%」です。後は、順に「部長層:59.5%」「主任・係長層:43.2%」といった結果です。驚くのは「事業部長層・役員層」を評価対象者としている企業が合計で「56.0%」もあることです。

事業部長層や役員層といえば、最もフィードバックが起こりにくいポジションでしょう。こういったポジションへのフィードバックができることも、360度評価の大きな強み・特徴といえます。

一方で、「新人・若手層:27.8%」といった数字もでており、360度評価が「部下が上司を評価する」ばかりではなく、各企業の導入目的によって様々なポジションに適用されていることが分かります。

出典元:リクルートマネジメントソリューションズ(2020)

誰が評価するのか

基本的に、全従業員が評価に参加するのが360度評価です。「上司・部下・同僚・他部署の従業員」が基本ですが、ケースによっては取引先の従業員が評価に参加する場合もあります。ただし360度評価は、上司が部下を評価する従来型の人事評価とは違うため、評価者の選定が極めて重要です。

その際、最も意識すべきことは「評価対象者を良く知っている」ことです。評価対象者と普段から仕事をしている従業員を中心に、部署やプロジェクトといった組織単位で選定します。ただし、ポジションや年齢によって評価の尺度は大きく異なります。評価者選定の際は、ポジションや年齢のバランスを意識することも重要です。

評価者の選び方

評価者の選び方については、「実施担当者が選ぶ」「評価対象者本人が選ぶ」「専門会社のシステムを活用する」といった方法があります。360度評価の実施担当者は、従業員同士の関係性を把握している「人事部・管理職・役員」の方が多いはずです。実施担当者が選ぶ方法は、最も合理的な選び方でしょう。

一方で対象者本人が選ぶ方法は、本人の納得感は高くなるものの、自分に好意的な評価者ばかりを選んでしまう懸念点があります。懸念を払拭するには、実施担当者と話し合いの機会を持ち、評価者が偏らないにするといった工夫が必要です。

このような側面から、調査・評価の専門会社が提供する「評価者選定機能システム」を活用するのもひとつの方法です。評価者選定が難航する場合や、対象者の意思を尊重しつつも評価者の偏りを避けたい場合には特に効果的といえます。

評価者の人数

評価者を選ぶ際は、「誰を選ぶのか」と同時に「何人選ぶのか」も重要です。360度評価は、多面的な視点の評価が集まってこそ公平性や客観性が担保できます。従業員の納得感を考えると、評価対象者一人に対して「5~10名」程度の評価者を選ぶようにします。具体的には「上司2名・同僚3名・部下3名」といったイメージです。

ただし、評価者が多くなりすぎても意味がありません。先に述べた評価者の選び方を意識し、自社の評価スタイルに合わせた人数を選定するようにしましょう。

関連記事:360度評価の評価者選定を失敗しない方法 

最後に

繰り返しますが、360度評価は従業員の成長と組織の活性化を図るためにあります。従業員を成長させ、組織を活性化させる360度評価を導入してみましょう。効果的な360度評価の活用は、従業員満足度やエンゲージメントも向上させるのです。

リアルワン株式会社は、信頼性の担保された「360度評価」で、従業員の成長と組織の活性化を後押しします。さらに、従業員満足度調査(ES調査)」や「エンゲージメント調査」で、従業員や組織の「今」を可視化することも可能です。どの調査も万全の体制で、企業様をサポートしています。

360度評価を導入し、従業員の成長や組織の活性化を目指したいとお考えの方は、ぜひリアルワン株式会社にご相談ください。