組織を活性化するには/方法や事例(取り組み)を紹介

DX化による業務の細分化は仕事のやり方を変化させ、価値観の多様化は仕事に対する考え方を変化させました。様々な領域で変化が起こり、不確実性が高い時代。先が見え難いとはいえ、企業は変化を受け入れながらも成長を続ける必要があります。そのような中で、一体感のある強い組織を作る「組織活性化」が注目されています。組織活性化とは何か、どうすれば組織を活性化できるのか。本記事では、組織活性化について深掘りし、その方法を事例の紹介と共に解説します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

組織活性化とは

組織活性化とは、従業員一人ひとりが企業の「理念・ビジョン・パーパス」を理解し、自律的かつ主体的に行動できている状態のことです。組織が活性化された状況の中では、全従業員が目標を共有し、開かれたコミュニケーションの基で同じ方向性を持ちながら仕事に取り組んでいます。各従業員は、お互いの価値観を認め合いリスペクトしながら、共有する目標の達成を目指すのです。

そこは「心理的安定性」が担保されており、モチベーションやエンゲージメントが高まり、安心感を持って仕事に取り組むことができる場所なのです。従業員一人ひとりが自分に自信を持ち、役割を明確に認識しながら持続的に前進している。活性化された組織とは、そのような状態にあるのです。

活性化している組織とは

活性化している組織について、その状態をもう少し詳しく見ていきましょう。

  • 従業員がイキイキと働いている
  • チームワークがとれている
  • 従業員が個人目標と業務目標を明確に捉えることができている
  • 建設的な議論が行われている
  • 従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大化できている
  • 人材配置が最適化している
  • 業務が効率化されている
  • 失敗を活かし挑戦できる環境が整っている
  • 離職率が低い

活性化している組織は、このような状態にあると考えられます。逆に言うと、組織活性化によってこのような状態を実現できるということなのです。 

組織を活性化させる施策の必要性

一体感のある強い組織を作る組織活性化ですが、今なぜ必要なのか。ここではその背景、そして施策の必要性を考察します。組織活性化が必要とされる背景はいくつかありますが、大きく2つの背景が考えられます。ひとつは、DX化。もうひとつは、リモートワークの急拡大です。詳しく解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIやIoTに代表されるデジタル技術を活用し、様々な業務プロセスを改善していこうとする取り組みです。それは、大きく変化する市場環境に適応するため、企業そのものを変えていこうとする取り組みでもあります。DX化を進める中で、業務は細分化され自動化されていきます。その負の側面として、「全体像が見えにくい、やりがいが失われる、他部署のことがわかり難い、意思疎通が取り難い」といったことが起こってきます。

それは、もうひとつの理由であるリモートワークの拡大でも同じです。働き方がオンラインになることで、組織内のコミュニケーションは減少していきます。ビジネスチャットの活用で業務は効率化されるでしょう。しかし、相手の気持を察したり、言葉の細かいニュアンスを感じることが難しくなっているのです。そのような状況をどう改善していくのか。従業員間のコミュニケーションを活発にし、一体感のある組織を構築する施策が求められている。そのひとつの方策として、組織活性化が注目されているのです。

組織活性化で得られる効果

組織の活性化は、大きな効果をもたらします。ここでは、その代表的な効果を5つ紹介しましょう。

経営層・管理職と目標を共有できる

組織活性化とは、全従業員が組織としての目標を共有し、同じ方向性を持って自律的かつ主体的に業務に取り組んでいる状態です。経営層、そして管理職と目標を共有することは、組織活性化の前提条件といえます。そのような環境では、「指示されたことだけをやる」「要領よく振る舞う」「時間を見ながら仕事をする」などといった受け身のスタイルは存在しません。経営層や管理職と目標を共有できるということは、目標達成に向けて各従業員が有機的に行動できる環境が整うということなのです。 

職場・チームのコミュニケーションが活発になる

活性化した組織の中では、コミュニケーションが活発に行われます。各部門はもちろん、経営層や管理職といった階層を越えてコミュニケーションが活発になる。まさしく「タテ・ヨコ・ナナメ」のコミュニケーションが機能している状態です。円滑なコミュニケーションは、情報共有をスムーズにします。目標を達成するには、紆余曲折があるでしょう。ポジティブなことも、ネガティブなこともある。そこでどうスムーズに情報を共有していくのか。それは、職場やチームにおける活発なコミュニケーションに違いないのです。

仕事に対するモチベーションが高まる

従業員は組織活性化により、「個人目標」そして「業務目標」を明確に捉えることができています。明確な目標は、自分の役割も明確化します。明確になった目標と役割の基で、「目標を達成したい、役割を果たしたい」というモチベーションが高まるでしょう。高いモチベーションは質の高い仕事につながり、周りから認められることによって従業員の承認欲求を満たします。承認欲求の充足は、仕事に対するモチベーションをさらに高めるでしょう。このように、組織活性化と従業員のモチベーションは密接につながっているのです。

生産性が向上する

活性化した組織の中では、円滑なコミュニケーションが行われ、情報もスムーズに共有することができます。また、従業員一人ひとりが明確な役割意識を持ち、自律的かつ主体的に行動しているため業務に無駄がありません。目標に向かう組織としての一体感は、仕事に対するモチベーションを高め、従業員のパフォーマンスを最大化させます。その結果として、組織全体のパフォーマンスが高まり生産性が向上するのです。生産性の向上は労働時間の削減となり、ワークライフバランスを向上させ働きやすい環境を作る。組織活性化は、このような好循環を生む効果があるのです。 

従業員のエンゲージメントが高まる

組織活性化による様々な効果は、従業員のエンゲージメントを高めます。組織に対する従業員のエンゲージメントは、仕事への積極性、そして組織全体のパフォーマンスに関わる大切な要素です。逆にいうと、従業員のエンゲージメントの濃淡が組織の活性化を測る「ものさし」になり得るということ。このように、組織活性化と従業員のエンゲージメントは密接な関係性にあるのです。 

組織を活性化する方法~手法やフレームワークを解説

プレゼンテーション

組織活性化が、組織にとって極めて重要であることを解説してきました。では、どのようにして組織を活性化させるのか。ここでは、その手法やフレームワークを紹介します。

経営理念・ビジョン・パーパスへの共感

組織活性化を進めるためには、まず企業の「経営理念・ビジョン・パーパス」を共有し共感を得る必要があります。どのような経営理念の基で、どういったビジョン(未来像・あるべき姿)を描き実現していくのか。そのためには、パーパス(存在意義・やるべきこと)の実践が不可欠です。そこへの共感を得るには、「経営理念・ビジョン・パーパスと仕事との結びつき」「自分の仕事の社会的役割や影響力」を従業員全員に理解してもらう必要があります。そのためには、経営層からの説明や研修といった働きかけが欠かせません。「経営理念・ビジョン・パーパス」を従業員が自分事にできたとき、組織活性化がスタートするのです。

組織開発・人材開発の促進

組織開発とは、従業員一人ひとりの関係性に働きかけることで、従業員が自分たちの力で組織を活性化させる取り組みのこと。当事者意識が醸成され、エンゲージメントを高める効果があります。そして人材開発とは、従業員一人ひとりの能力やスキルを高めパフォーマンスを最大化すること。どちらも、組織を活性化させるための有効な施策です。「組織」にフォーカスする組織開発と、「人」にフォーカスする人材開発は車の両輪。組織活性化に直結する施策なのです。

※組織開発については、「組織開発とは?事例や手法(フレームワーク)について」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

人事評価制度の構築

組織を活性化するためには「人材」が必要不可欠。ここまで見てきたように、人材たる従業員の自律的かつ主体的な行動が組織活性化を推し進めていくのです。その従業員を評価する「人事評価制度の構築」は、従業員の成果や積極的な行動を正当に評価する上でなくてはならないものでしょう。人事評価制度の構築は、組織活性化の取り組みとセットで進めるべき重要項目なのです。

※人事評価制度については、「人事評価制度とは?目的や作り方、事例を紹介」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

1on1ミーティング

「1on1ミーティング」とは、従業員と1対1で行う定期的なミーティングのことです。従業員が抱える仕事上の課題や、キャリア上の悩みを共感的に傾聴することが大きなポイント。従業員を主体にして、成長をフォローするのが目的です。強制や押しつけになることなく、従業員の自律的かつ主体的な問題解決を促します。従業員が課題や悩みを解決し、スッキリした気持ちで仕事に向き合うことでパフォーマンスも高まるでしょう。「1on1ミーティング」の有効活用が、組織活性化を促進することにつながるのです。

OKR

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、「目標と主要な成果」と訳される目標の設定管理方法です。OKRは、「経営理念・ビジョン・パーパス」といった定性的な目標を数値し、定量的な目標として落とし込む際に役立ちます。ひとつの「O:定性的目標」に対して複数の「Key Results:定量的成果指数」を設定し、目標達成に向けたプロセスの「管理・評価」を行っていきます。OKRによって「目標と主要な成果」が可視化されるため、「管理・評価」が容易になり、全従業員が同じ方向性を持って目標達成を目指す体制を作ることができるのです。

マッキンゼー7S

「マッキンゼー7S」とは、アメリカのコンサルティング会社「マッキンゼーアンドカンパニー社」が提唱する、組織と組織にとって重要な要素との連携を「管理・分析」するフレームワークのことです。「7つのS」を活用し、「課題の洗い出し→状況の把握→管理・分析→方策の策定」を行います。

3S(ハード面)
・組織構造(Structure)
・戦略(Strategy)
・システム(System)

4S(ソフト面)
・人材(Staff)
・スキル(Skill)
・スタイル/社風や企業文化(Style)
・共通の価値観(Shared Value)

相互につながる3Sと4Sの要素にそって課題を洗い出すことで、組織の現状が把握しやすくなります。そこから見えてきた、ハード・ソフト両面の課題をクリアするための方策を策定。組織活性化に向けて具体的な行動を起こしていくのです。

組織活性化への取り組み~企業の事例

ディスカッション

ここからは、組織の活性化に向けて様々な取り組みを行っている企業の事例を紹介します。

サイボウズ株式会社

サイボウズは、組織を活性化させる施策として「1on1ミーティング」に取り組んでいます。サイボウズ流の1on1ミーティングは、「ザツダン」と呼ばれています。サイボウズの「ザツダン」は、一般的な1on1ミーティングとどこが違うのか。

1on1ミーティングは、リーダーとメンバーが1対1で定期的にミーティングを行い、仕事上の悩みや課題を共有し問題解決のきっかけにする時間。その主な目的は、人材育成です。これを、サイボウズ流1no1ミーティングの「ザツダン」では、話す内容や時間を決めることなく各マネージャーが自発的に行っています。その主な目的は、コミュニケーション量を増加させること、そしてメンバーの状況を知ること。主体はあくまでもメンバーであり、リーダーはサポート役に徹して問題解決を促すことで組織活性化につなげています。

カルビー株式会社

カルビーでは、組織活性化そして働き方改革の一環として「フリーアドレス制」を導入しています。フリーアドレスとは、従業員が自分の固定席を持たない取り組みのこと。従業員は出社時に、入り口に設置された「ダーツシステム」にアクセス。「ソロ席・集中席・コミュニケーション席」の中から座席を選択すると、システムがその日の席を自動で決定してくれます。

1人で集中して仕事をしたいときは、仕切り付きの「ソロ席」。さらに集中を求め、接触したくない場合は「集中席」。そして、コミュニケーションを求める場合は4人掛けの「コミュニケーション席」と、自分が求める仕事のスタイルや業務内容によって、その日の自分の席を自由に選択できるようになっています。フリーアドレスは、一般従業員や管理職ばかりでなく役員にも適用されています。部署や役職の壁を越えたコミュニケーションの増加、そして斬新なアイデアの創出による組織の活性化を目指しています。

株式会社メルカリ

メルカリは、組織活性化のために「メルチップ(mertip)」と呼ばれる「ピアボーナス(成果給)制度」を取り入れています。メルチップとは、従業員がお互いに対する「感謝の言葉や賛辞の思い」を、少額の「お金」と共に贈り合う取り組みのことです。いわゆる「インセンティブ」の一種ですが、従業員同士であれば「誰にでも」「お互い」贈り合うことができる点が新しいところです。

メルチップのやり取りは「可視化」されており、チャット(Slack)によって全従業員が見ることができるシステムとなっています。人事制度の構築やエンゲージメント施策の一環として取り入れ、日々発生している見落とされがちな「Go Bold」「All for One」「Be Professional」な出来事に対して意識を向けることを目指しています。メルチップの導入によって、社内コミュニケーションの活性化や仕事に対するモチベーションのアップが期待されています。

課題にフォーカスし葛藤をマネジメントする

組織を活性化するための方法を、事例をあげながら解説してきました。活性化した組織は、マネジメントが機能しやすくなります。逆に言うと、組織が活性化していくプロセスの中では、マネジメントが重要な意味を持つのです。組織活性化に向けての重要なポイントは、組織に内在する「課題」にフォーカスすること。組織には様々な課題があります。その課題を解決する過程では、従業員間の衝突もあるでしょう。意見や考え方の対立、価値観のぶつかり合い、論争など、様々な「葛藤」が考えられます。この一見ネガティブにも思える葛藤を機会と捉え、ここを乗り越えていく。その先にこそ、組織活性化があるのです。そしてそれを実現させるのは「マネジメント」に他なりません。

「衝突・論争・争い」といった葛藤(コンフリクト)をマネジメントしプラスに変えていく。それは、従業員間の深い信頼関係につながるでしょう。また、斬新なアイデアそしてイノベーションにつながるでしょう。そして、組織活性化につながるのです。この「衝突・論争・争い」といった葛藤(コンフリクト)をマネジメントする「コンフリクト・マネジメント」は、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の中で特に重要性を増していくでしょう。

組織活性化は、一体感のある強い組織を作ります。そのためには、課題にフォーカスすることが重要です。組織を活性化するには、課題の洗い出しから始める。組織の課題を洗い出すには、「エンゲージメント調査」「従業員満足度調査」「360度評価」といったサーベイが効果的です。課題を洗い出し、解決することで組織を活性化させていく。そのプロセスを、リアルワン株式会社がサポートします。ぜひ、ご相談ください。