サーバントリーダーシップとは|重視される背景とメリット・10の特性・成功事例を紹介

サーバントリーダーシップは、社員の自律性やパフォーマンス向上、生産性向上などが求められる現代において注目が集まっているリーダーシップ論です。従来の支配型リーダーシップが現在のビジネス環境に即さなくなっている中で、リーダーシップのあり方について見直す時期にきているといえます。
ここでは、サーバントリーダーシップとは何か、サーバントリーダーに求められる10の特性、導入するメリット・デメリット、成功企業の例まで詳しく見ていきます。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

サーバントリーダーシップとは

ミーティング

サーバントリーダーシップは、AT & T(アメリカ電話電信会社)マネジメント研究センター長を務めたグリーンリーフ氏が説いたリーダーシップ論です。

グリーンリーフ氏は、サーバメントリーダーシップとは「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである(Servant first, Leader second)」としています。また、「サーバントとしてのリーダーシップは、最初は尽くしたい・奉仕したいという自然な感情からはじまり、その後、自覚的に選択したうえで導きたいという気持ちになるものなのだ」とも述べています。

サーバント(Servant)の日本語訳は「召使い、使用人、公僕、信奉者、奉仕者」となりますが、グリーンリーフ氏の意図を踏まえると、召使いや使用人などの表現は適切でないといえるでしょう。そのため、日本では「支援型リーダーシップ」「奉仕型リーダーシップ」「調整型リーダーシップ」などの表現が用いられています。

参考:Greenleaf,R.K. 1977 Servant Leadership:A Journey into the Nature if Legitimate
power and Greayness.New York,Paulist Press
『サーバントリーダーシップ』(著:グリーンリーフ R.K 監修:金井壽宏 翻訳:金井真弓 英治出版/2008)

サーバントリーダーシップについての誤解

日本ではリーダーシップというと、先頭に立ってメンバーを引っ張っていく力、または周囲を巻き込む影響力を思い浮かべることが多いかもしれません。そうしたイメージが根強い中では、サーバントリーダーシップに抵抗を感じることもあるでしょう。

しかし、部下に「どのようなリーダーについていきたいか」という質問をすると、「信頼できる人」という声が上位に上がります。さらに「信頼できるリーダーとは?」と問うと、「部下のために行動できる人、支えてくれる人」という答えが返ってくることが少なくありません。「支える」「尽くす」「奉仕する」というキーワードは、まさにサーバントリーダーシップ論につながるものであり、部下と上司の信頼関係を築く上での大切な要素となっていることがわかります。

管理職に就いたことがある人なら、着任当初は「部下のために頑張ろう。部下を育て支えられるリーダーになろう」という気持ちが自然に湧きあがったという経験を持っているケースも多いはずです。しかし年数を経て、目標達成へのプレッシャーや多忙な業務に追われているうちに、部下とのコミュニケーションが希薄になったり、逆に強制的になったりすることがあります。知らず知らずのうちに、部下との距離が離れてしまったと自戒するケースもあるでしょう。

リーダーシップのスタイルは、自身の強み・持ち味を活かせることが理想的であり、人それぞれに異なるものです。しかし、サーバントリーダーシップは、いわば部下の視点・期待を捉えたものであり、どのスタイルのリーダーであっても根底に備えておくべき心構えと見ることができます。

自身が部下だった頃の視点や、上司に期待したことを忘れないリーダーであるためにも、常に意識しておきたいことです。

サーバントリーダーの役割

講演している女性

奉仕という言葉の印象から、サーバントリーダーは部下の主張を何でも聞き入れる、あるいは部下の言いなりになるスタイルを想像されがちですが、これは間違った解釈です。

『サーバントリーダーシップ入門』の著者である神戸大学名誉教授の金井壽宏氏の言葉を借りると、サーバントリーダーは「ミッション(使命)の名の下に奉仕者となる」ということになります。つまり、ミッションを実現するための考え方・行動のあり方を示しているのがサーバントリーダーシップであり、これらは包括的に捉える必要があるということです。

近年は、企業や経営の方向性を示す上でMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明示している企業も増えています。ミッションは、企業が社会に対して果たす使命や存在意義を表すもので、ビジョンは企業が目指す目標やあるべき姿を明瞭にしたものです。バリューは、ミッション・ビジョンを実現するために何をするのかを具体的にしたものを指します。

サーバントリーダーの役割は、ミッション・ビジョン・バリューを踏まえた上で奉仕の精神を持って部下に接し、より良い方向へと導くことです。決して、部下の好き勝手を許すリーダーではない点に注意しなければいけません。企業・組織が目指すゴールに向けて、部下の共感を得られるように伝え続けるといった粘り強い姿勢が求められるのです。

参考:『サーバントリーダーシップ入門』(著:池田守男・金井壽宏 かんき出版/2007)

サーバントリーダーに必要とされる10の特性

話し合い

サーバントリーダーには10の特性があります。これはグリーンリーフ・センター・アメリカ本部の所長を努めるラリー・スピアーズ氏が整理したもので、金井教授の著書『サーバントリーダーシップ入門』においても紹介されています。

以下に要点を整理しました。

傾聴(Listening)相手の話にしっかり耳を傾け、意見や考えを汲みとろうという姿勢を持つ。同時に自身の内なる声にも向き合うことで、所属する組織のミッション・ビジョン・バリューと部下の意見・考え、自分自身の存在意義を包括的に考えることができる
共感(Empathy)相手の立場にたって物事を捉えようとする姿勢を持つ。ポジションや環境などによって視点や価値観が変わることを理解していれば、相手の気持ちに共感することができ、深い理解と思いやりを持って接することができる
癒し(Healing)部下は常に一定のモチベーションを持ち続けられるわけではなく、不安やプレッシャーを抱えたり、ときには傷ついていたりすることを理解する。癒す力を持つことで、部下が本来持っている能力を発揮できる状態へと導くことができる
気づき(Awareness)常に高い意識を持って物事の本質を見抜こうとする、また変化に対して敏感であろうとする姿勢を持つ。自分自身に対しても常に見つめ直す機会を持ち、多くのことに気づくことができるリーダーは、部下にも多くの気づきを与えられる
説得(Persuasion)権限に依拠したり服従を強要したりすることなく、周囲の人を説得できる。信頼を基盤にした説得は、相手にやらされ感を与えずに、自ら行動したいと思わせることができる
概念化(Conceptualization)日々の業務上の目標を超えて、実現したい夢に向けてストレッチしていく力を持つ。リーダーが大きな夢やコンセプトを示すことで、ビジョナリーな概念が組織にもたらされる
先見力、予見力(Foresight)過去の教訓と現在の状況を踏まえ、将来を見通そうとする姿勢を持つ。変化の激しい現代において正しい解を導くことは容易ではないが、将来を見定めるための努力を怠らないリーダーは、部下が向かうべき方向をしっかり照らすことができる
執事役(Stewardship)執事役は相手のことを優先的に考え、より良いものを提供したいと願う。自分自身は一歩引いた立ち位置をとり部下を主役にできるリーダーには、安心して付いていくことができる
人々の成長にかかわる(Commitment to the growth of people)部下の成長に関与したいと願い、的確な方法を用いようとする姿勢を持つ。部下の成長や成果を心から喜べるリーダーは、部下から強い信頼を得る
コミュニティづくり(Building community)部下や組織が成長するためのコミュニティづくりを積極的に行う姿勢を持つ。環境がもたらす影響を理解しているリーダーは、改善するための労力を惜しまず、変化に強い組織を作る

上表からわかり通り、サーバントリーダーには生まれ持った資質が重要なわけではなく、本人の意志や努力によって身につけられるものばかりであることが大きな特徴となっています。

サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップの違い

プレゼンテーション

従来、日本の主流だったのはトップダウンに代表される支配型リーダーシップです。これは、もともと軍隊で確立された手法を企業・組織に当てはめて、マネジメントやリーダーシップに用いてきた歴史があるためです。

現在は、支配型リーダーシップというと時代に即していないスタイルと捉える風潮がありますが、一方で組織風土として根付いている企業も少なくないのが実際です。

サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップの違いは、以下のように対比できます。

支配型リーダーシップサーバントリーダーシップ
動機・より強い権力を持ちたい・部下を支えたい、部下の成長のための奉仕をしたい
重視すること・競争に勝ち抜くこと ・他者から賞賛されること・互いが協力し合い目標を達成すること ・全員が成果や喜びを得られること
影響力の発揮の仕方・権力への絶対服従を求める ・部下に畏怖を与える・部下の自主性を尊重し、信頼関係を基盤に組織や業務を動かしていく
コミュニケーションの仕方・部下に命令・指示する ・一方向的な説明に終始する・傾聴の姿勢で部下と接する
業務遂行の方法・自身の能力を高めることで、指示・命令に従わせる形を作る・コーチングやメンタリングを用いながら、部下とともに成長する
成長の捉え方・社内の上下関係を重視し、うまく立ち回りながら自分の地位を高める・会社の方向性と部下のモチベーションを調和させながら組織の成長を目指す
責任の捉え方・失敗したときに罰するためのもの・責任を明確に示し、失敗から学べる環境づくりを重視する

上表からわかるように、サーバントリーダーシップは支配型リーダーシップのアンチテーゼとなっています。こうした違いは、部下の行動や成長に多大な影響を及ぼします。

支配型リーダーのもとで働く部下は、恐れや義務感が行動の動機となり、命令・指示がなければ行動しなくなります。また、常にリーダーの機嫌を伺い、責任を追及されないよう細心の注意を払うといった働き方が目立つようになります。

一方、サーバントリーダーのもとで働く部下は会社・組織のビジョンや目標にコミットし、周囲と協調しながら貢献することに喜びを感じるようになります。くわえて自律性が育ち、自ら創意工夫しながらパフォーマンスを高めていこうとする働き方が身につきます。

サーバントリーダーシップが重視される背景

本来、サーバントリーダーシップはどのようなリーダーにも共通する「根底に備えておくべき心構えや思想」であり、時代を超えるものです。しかし、現代においてますます注目を集めるようになった背景には、以下のようなビジネス環境の変化が影響しています。

VUCA時代に成果を出せる人材を育てる必要性

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity曖昧性)の頭文字をとった略語です。現代は将来の予測が難しく、変化に対して柔軟かつスピーディに対応しなければ、企業の存続自体が危ぶまれる時代であることを表している言葉です。

こうした環境下では、従来型である「管理職が過去の経験を頼りに判断して指示を出す」というやり方では立ち行かなくなっています。むしろ市場の変化を真っ先に感じ取っているのは、顧客の反応を直に見ている現場の社員というケースも多いでしょう。

VUCA時代に企業を成長させるには、自ら考え行動できる社員の存在が鍵を握ります。サーバントリーダーを育成することは社員の自律性を高めることにつながり、先行き不透明な時代にあっても競争力を持った組織へと進化することができるのです。

多様化する社員の意識・価値観・働き方に対応する必要性

社員の意識や価値観、働き方が多様化している今、従来のような一方通行の指揮命令では組織を動かせなくなっています。また、個々の社員の考えや意欲、やりがいに目を向けない組織では、パフォーマンスが低下したり離職率が高まったりする傾向もみられます。社員のやる気と能力を引き出し、継続的に高いパフォーマンスを出せる組織の土壌を作る上でもサーバントリーダーシップが求められています。

コンプライアンスを強化する必要性

現代ではパワハラやセクハラをはじめとする、様々なハラスメントが社会問題として取り沙汰されることが多くなっています。万が一、自社にこうした問題が起きてしまうと、一気に社会的信用を失ってしまうという大きなリスクを抱えることになります。

ハラスメントが起きる背景には、ダイバーシティ(多様性)への理解不足や、管理職は偉いポジションにあるので許されるはずといった誤った認識が引き金となるケースが少なくありません。こうしたパラダイムを転換するためにも、相手を尊重し傾聴する姿勢を持ったサーバントリーダーの存在が必要不可欠になっています。

組織体制を見直す必要性

労働力人口が減少の一途をたどる日本では、企業を成長させるためのキーワードとして生産性向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が飛び交っています。これに伴い、多様なITサービスが提供され、これまでルーティン的に行われてきた単純作業が減少し、代わりに知識労働の割合が増加しています。

同時に、管理職に期待される役割にも変化が見られるようになりました。従来、部下の管理監督が主な役割であったのに対し、現在では部下と協同しながらスピーディに成果につなげていくことが求められるようになってきました。これを実現するには、部下と一緒に学び成長していこうとする意欲を持ったサーバントリーダーが必要であり、組織体制を見直す必要性が増しています。

サーバントリーダーシップのメリット・得られる効果

会議

サーバントリーダーシップを組織に取り入れることは、大きく捉えれば従業員満足度の向上やモチベーションやエンゲージメントの向上、パフォーマンスの向上につながると考えられます。より具体的には、次のようなメリット・効果を期待できます。

自律性の高い組織へ

上司が部下に尽くし、部下のモチベーションや能力を引き出すことで、自発的に考え行動できる社員が増えていきます。上司と部下が一緒に考え行動できるようになれば、市場の変化に対して柔軟かつスピーディに対応できる組織へと生まれ変わることが期待できます。

心理的安全性の高い組織へ

上司と部下が信頼でつながり闊達な意見交換が行われる風通しの良い組織となり、職場の心理的安全性が高まるというメリットがあります。挑戦できる組織風土が醸成されれば、新たな価値を創出できる機会も増えるでしょう。

本質的な対話ができる組織へ

サーバントリーダーシップを取り入れることで、上司と部下が本質的な対話ができる関係性が構築されていきます。ハラスメントが起こりにくくなるとともに、懸念点があった場合にも指摘の声が上がりやすくなるため、コンプライアンス上のリスクを未然に防ぐことが可能になります。

サーバントリーダーシップを組織に浸透させるには

会議

支配型リーダーシップの組織から脱却してサーバントリーダーシップを浸透させるためには、経営層をはじめ、全社的な取り組みが求められます。以下にポイントをまとめました。

経営層の理解と意識改革

サーバントリーダーシップは他のコーチング手法やマネジメント手法とは異なり、奉仕の精神を根付かせることが重要になります。そのため、会社・組織にサーバントリーダーシップを浸透させるには、まず経営層の理解と意識改革が必要不可欠です。取り組むにあたっては社内で明文化するとともに、経営層が自らサーバントリーダーとなって社員の成長に関与する姿勢を見せることが望ましいといえます。

社員への啓蒙

支配型リーダーシップに慣れている組織では、奉仕という言葉を聞いただけで抵抗感を覚える管理職が少なくありません。そのため、サーバントリーダーシップの目的や意義、もたらされるメリットについて、しっかり理解を深められる機会を設ける必要があります。

欧米では管理職向けトレーニングの一つとしてサーバントリーダーシップをテーマに置き、理解と実践力を身につけています。また、360度評価を活用するのも効果的な方法です。360度評価は管理職向けに実施されるケースが多く、リーダーシップをテーマとすることもできます。この場合、先述したサーバントリーダーシップの10の特性を評価項目に含めることで、組織への浸透を図ります。

顧客を頂点とした逆ピラミッド型組織への変革

資生堂は、サーバントリーダーシップを早期に取り入れた企業の一つです。同社では顧客を頂点に、続いて現場社員→管理職→経営層という従来とは逆のピラミッド型組織にすることを社内外に表明して話題を集めました。

CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)の向上は、コモディティ化が進む現代のビジネス環境において多くの企業が取り組んでいるテーマの一つでしょう。資生堂の事例からも、顧客体験を向上するには顧客起点の組織づくりが鍵を握っているとうかがい知ることができます。そして、これを可能にするためには、サーバントリーダーシップを中核に据えた組織改革が重要になります。

サーバントリーダーシップの成功事例

チーム

サーバントリーダーシップを取り入れ、成功している企業の事例を紹介します。

『資生堂』~最前線にいる社員たちを支える「店頭起点の経営改革」

サーバントリーダーシップの成功企業として知られているのが資生堂です。当時社長を務めていた池田氏は「店頭起点の経営改革」というミッションを掲げ、美容部員をはじめとする最前線にいる社員たちを営業所や本社が支えるという方針を徹底し、企業の発展につなげています。

池田元社長は自身の著書の中でも、「ビジョンや理念、方針はトップダウンであっても実践においては現場の仕事が円滑に運営できるように、サーバントとして社員たちを支える存在でありたい」と記しています。

『スターバックスコーヒー』~店舗スタッフをパートナーと呼び一人ひとりを尊重

スターバックスコーヒーも、サーバントリーダーシップの成功例として挙げられる企業の一つです。同社では、アルバイトを含めた店舗スタッフ全員をパートナーと呼び、一人ひとりを尊重している姿勢が明瞭に伝わるよう工夫しています。日本において1 on 1ミーティングが注目されるずっと以前から、店舗マネージャーがパートナー全員と1 on 1ミーティングを実践していたことも有名です。

創業者のハワード・シュルツ氏は、パートナーを大切にする会社を創りたいとしており、「すべてのパートタイマーに健康保険制度を適用する」「大学の学費を支援する」など、従業員の支援にも積極的に取り組んでいます。

1on1ミーティングの効果

企業事例ではありませんが、1 on 1 ミーティングにはサーバントリーダーシップの「部下を支援する」という精神が宿っていると見ることができます。日本ではYahoo! JAPANが導入したことで1on1ミーティングが一躍注目を集めることとなりましたが、IT企業を筆頭に、現在では業種を問わず多くの企業で実施されるようになりました。

実施目的が部下の仕事や成長を支援するものであったり、モチベーションやエンゲージメントの向上といったものであれば、1 on 1ミーティングに真摯に取り組む企業・組織、リーダーはサーバントリーダーシップを実践していると捉えることができるでしょう。

サーバントリーダーシップのデメリット・課題と対策

悩み

サーバントリーダーシップは組織に様々なメリットをもたらしてくれますが、一方でデメリット・課題に挙げられることもあります。主なデメリット・課題と、解決に導くための対策について見ていきましょう。

社内啓蒙に時間と労力を要する

部下に奉仕し、支えていくという考え方自体、日本の企業にとってなじみ深いものではないため、社員の理解・納得を醸成するまでに時間や労力を要する傾向があります。

短期的に成果を出すことが難しい

指揮命令で組織や業務を動かしていく支配型リーダーシップと比較すると、奉仕の精神で部下と接することでパフォーマンス向上につなげていくサーバントリーダーシップは、短期的に成果・業績につなげることが難しいという側面があります。

管理職側からすると「つべこべ言わずに指示通りにやれ」といった支配型スタイルのほうが、いち早く成果につなげられたり、問題解決ができたりするという誘惑に駆られるため、サーバントリーダーシップがなかなか根付かないという課題があります。

多様化する社員の価値観に対応するのが困難

サーバントリーダーシップでは、経営方針や目標に対する部下のコミットメントを引き出すことが重要になります。しかし、仕事に対する価値観が多様化し、雇用形態も複雑になっているなど、一人ひとりのモチベーションを理解した上で導いていくことは容易いことではないでしょう。

サーバントリーダーシップの意義は理解していても、実践できるリーダーを育てるのが難しいという課題を乗り越える必要があります。

サーバントリーダーシップを組織に定着させるための有効な対策とは

先述の課題・デメリットに共通するのは、サーバントリーダーシップへの理解不足と、リーダー育成の難しさです。これらを解決するには、経営トップが率先してサーバントリーダーシップに取り組む姿勢を見せることが必要です。また、組織全体に浸透させるための教育・トレーニングは有効な対策です。

たとえば、管理職研修のテーマとしてサーバントリーダーシップを必ず含めるようにするという方法があります。また、360度評価の中にサーバントリーダーシップの要素を評価項目としてくわえ、意識を高めていくというやり方も効果的です。

時代とともに働き方や仕事に対する価値観が変わっても、ミッションやビジョンの実現に向けて経営方針を遵守することに変わりはありません。サーバントリーダーシップは、どのような時代にも対応できる強い組織を作るための鍵となるものです。根気強く語り続けることが重要です。

まとめ

「指示待ち型社員の意識改革ができない」「次世代リーダーがいない」「生産性が上がらない」といった組織課題は、業種を問わず多くの企業が抱えている悩みです。サーバントリーダーシップは、まさにこれらの壁を乗り越えるための糸口となります。社員一人ひとりが組織や仕事に魅力を感じ、顧客に高い価値を提供し続けられる企業へと進化を遂げることは一つの理想形といえるでしょう。サーバントリーダーシップを取り入れたい企業にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。