パルスサーベイとは?意味や目的、活用方法を導入事例と共に解説

従業員と企業の関係性の維持を目指し、従業員の状態を把握する「調査・サーベイ」の導入が広がっています。そのひとつが「パルスサーベイ」です。パルスサーベイは、実施頻度が「週1回~月1回」と高く、従業員の状態をリアルタイムに把握できることから、導入する企業が増えています

しかし、「他の調査・サーベイとの違いが分からない」「意味ない」といった声が多いのも事実です。そこで本記事では、パルスサーベイについて深掘り。パルスサーベイの意味や目的、効果的な活用方法を企業の導入事例と共に解説します。

【本記事で得られるパルスサーベイの情報】

・意味や目的、注目される背景
・エンゲージメントサーベイとの違い
・効果的な活用シーン
・デメリットと実施する際の注意点
・質問項目と具体的な質問例
・企業の導入事例
・「意味ない」といわれる理由及び効果を発揮する活用方法
・費用、コストについて

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

パルスサーベイとは?内容や導入が進む背景

パルスサーベイとは、どのような調査・サーベイなのでしょうか。ここでは、パルスサーベイの内容、そして導入が進む背景について解説します。

パルサーベイの意味

パルスサーベイとは、従業員の心情や満足感を定期的に測定し可視化していくアンケート調査のことです。その大きな特徴は、やはり調査頻度でしょう。週1回や月1回、場合によっては数日に1回といった短いサイクルでアンケート調査を行い、従業員の状態をリアルタイムに可視化していきます

パルスサーベイという名称は、人の脈拍(パルス)を測定するように、高い頻度で従業員の状態を調査(サーベイ)することに由来します。環境変化が著しい現代にあって、従業員の「今の状態」をタイムリーに捉え、課題の改善につなげていくアンケート調査がパルスサーベイなのです。

パルスサーベイの目的

次に、パルスサーベイの目的を解説しましょう。

【パルスサーベイの目的】

・従業員や企業が内包する問題の早期発見
・課題の設定と改善プランの立案
・従業員の満足度やエンゲージメントの向上

高い頻度で行うパルスサーベイは、従業員や企業が内包する問題の早期発見につながります。問題を早期に発見することによって、課題の設定と改善プランの立案が可能になるでしょう。改善プランの実行は、職場環境を整え従業員の働きやすさにつながります。

働きやすい職場環境は、最終的に従業員の満足度やエンゲージメントを向上させるでしょう。これが、パルスサーベイの大きな目的といえるのです。

パルスサーベイが注目される背景

なぜ今、パルスサーベイが注目されているのでしょうか。ここでは、パルスサーベイが注目される背景を考察します。

【パルスサーベイが注目される背景】

・人材の定着を促進させるため
・ブランディングの必要性
・サーベイの調査精度の高まり

生産年齢人口(15歳~64歳の人口)の減少は、すべての企業が避けて通れない問題です。人材の採用がますます厳しくなる状況にあって、企業は人材の定着を促進させる取り組みが必要不可欠なのです。その取り組みの一環として、他社との差別化を図るブランディグの必要性が高まっています

そのためには、従業員と企業の「今の状態」をリアルタイムに可視化し、働きやすい職場環境を目指し継続的に改善を繰り返す必要があります。そこに、高い頻度で調査を実施するパルスサーベイがフィットしたのです。

ITやAIといったデジタルテクノロジーの発達が、サーベイの調査精度を高めたことも大きな要因でしょう。高い精度のデータによって、改善プランの効果が高まったことも要因のひとつです。このような背景により、パルスサーベイに注目が集まり企業への導入が進んでいるのです。

パルスサーベイとエンゲージメントサーベイの違い

従業員と企業の状態を測定する調査は、パルスサーベイだけではありません。従業員と企業の「結びつき」の強さを測る「エンゲージメントサーベイ」も、そのひとつです。

エンゲージメントとは、仕事に取り組む際の3つの側面、「思考面・情緒面・行動面」において、従業員が積極的に関与している状態のこと。この関与の度合いを、定量的かつ定性的に測定する調査が「エンゲージメントサーベイ」です

従業員が仕事や企業に対して抱く、「貢献意欲・愛社精神・信頼感」を表す「エンゲージメント(engagement)」と、「調査」を表す「サーベイ(survey)」を組み合わせてエンゲージメントサーベイと呼ばれています。

パルスサーベイとエンゲージメントサーベイは、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、2つのサーベイの違いを整理してみます。

パルスサーベイエンゲージメントサーベイ
実施頻度週1回~月1回年に1回程度
質問項目限定的に設定包括的に設定
質問数10問前後50問~100問
調査対象小規模・部署やチーム単位大規模・会社や組織単位
フィードバックまでの期間短い長い

パルスサーベイとエンゲージメントサーベイの大きな違いは、調査の実施頻度にあります。パルスサーベイは、短いスサイクルで調査を繰り返す反復型のアンケート調査です。これに対しエンゲージメントサーベイは、1年に1回程度、じっくり時間をかけて行うアンケート調査といえます。質問数の違いから、フィードバックまでの時間も違ってきます。

パルスサーベイに限ったことではありませんが、実施する際は「調査・サーベイ」の特徴を理解し、目的を明確にした上で実施することが重要です。

>> エンゲージメントサーベイとパルスサーベイの比較は、コチラの記事に詳しく書いています。

パルスサーベイの効果的な活用シーン

ここでは、パルスサーベイの効果を見ていきましょう。パルスサーベイが効果を発揮するのは、次のようなシーンです。

【パルスサーベイの効果的な活用シーン】

・状況の検証や確認
・メンタルヘルスやストレスチェックの一環
・職場環境の改善

ひとつずつ詳しく解説します。 

状況の検証や確認

従業員や企業の持続的な成長を図っていくには、制度改革や組織改編といった取り組みが必要不可欠です。状況に応じた人事制度や評価制度の見直し、昇進や昇格、部署の異動、最新設備の導入といった施策は、企業を継続的に活性化していく上で、避けては通れない取り組みでしょう。

このような「新しい取り組み」を行ったとき、その後の「状況の検証や確認」にパルスサーベイは大きな効果を発揮します。パルスサーベイは、短いサイクルでアンケート調査を繰り返します。この調査スタイルによって、「新しい取り組み」が企業にどのような影響を与えているのか、その状況をリアルタイムに検証・確認することができるのです。 

メンタルヘルスやストレスチェックの一環

変化のスピードが早い時代です。しかも、ITやAIの発達で便利になった反面、物事や人間関係の複雑さは、これまで以上に増しているといえます。このような時代背景の中で、従業員は多くの意思決定を求められているのです。

変化が激しく、関係性が複雑になった企業内において、従業員にはストレスが蓄積している可能性があります。先に述べた「新しい取り組み」による変化も、従業員にとってはストレス要因のひとつになり得るのです。このような状況の中で、従業員に対するメンタルヘルス対策、そしてストレス対策は今や必須の取り組みでしょう。

従業員の状態を高い頻度でチェックするパルスサーベイは、メンタルヘルスやストレスチェックの一環としても大きな効果を発揮するのです。

職場環境の改善

ここまで見てきたように、従業員や企業が持続的な成長を図り、働きやすい職場を整備していくには、職場環境の改善が欠かせません。従業員はもちろん、企業の状態は日々刻々と変化しているのです。

その変化をリアルタイムに吸い上げ課題を設定、改善プランを立案するためにも、高い頻度の調査を行う必要があります。パルスサーベイは、ここでも効果的です。

実施頻度の高さは、従業員とのコミュニケーション効果を高める側面を持ちます。これが、課題の早期設定、早期改善につながり、従業員の満足度やエンゲージメントを向上させていくのです。

>> パルスサーベイの効果と目的については、コチラの記事にも書いています。

パルスサーベイのデメリット

大きな効果があるパルスサーベイですが、デメリットがないわけではありません。ここでは、パルスサーベイのデメリットを解説します。

【パルスサーベイのデメリット】

・実施担当者への負担が大きい
・従業員が飽きてしまい調査の質が低下する
・頻度が高いため改善プランの立案が間に合わない
・実施目的を明確にしなければ効果がでない

パルスサーベイの頻度の高さは、実施に大きな影響を与えます。最も大きな影響は、実施担当者の負担が大きくなることです。また、週1回~月1回といった短いサイクルで実施されるアンケートに従業員が飽きてしまい、調査の質が低下する可能性があります

さらに、改善プランの立案が、短い調査サイクルに間に合わない恐れがあります。これは、タイムリー感がメリットであるパルスサーベイにとって大きなデメリットでしょう。最後に、これは全ての「調査・サーベイ」にいえることですが、実施する目的を明確にしなければ効果は望めないのです。

関連記事:パルスサーベイのメリットデメリット

パルスサーベイを実施する際の注意点

前述のようなデメリットを持つパルスサーベイですが、どのように実施すれば良いのでしょうか。ここでは、パルスサーベイを実施する際の注意点を解説します。

【パルスサーベイを実施する際の注意点】

・実施目的の明確化
・安心して回答できる環境整備
・適切な質問項目の設定
・フィードバックの実行
・専門チームの編成
・専門会社への外部委託

目的が曖昧では、効果が望めません。まずは、実施目的を明確化しましょう従業員が安心して回答できる環境を整備することも必須。回答方式は様々ですが、従業員の本音を引き出すには、やはり匿名式」がベターです。

さらに、より効果を望むなら、質問項目が重要。適切な質問項目の設定は、大きなポイントです。また、回答した従業員には、必ずフィードバックを実行しましょう。

最後に、パルスサーベイを実施するには、人的・時間的負担が発生します。この人的・時間的負担を軽減するには、社内で専門チームを編成するか、専門会社に外部委託し、パルスサーベイツールの導入をおすすめします

関連記事:パルスサーベイツールの選び方

パルスサーベイの質問項目と質問例

パルスサーベイの効果を左右するのが、質問項目です。ここでは、パルスサーベイの質問項目と設問について具体例をあげながら解説します。

パルスサーベイの質問項目

パルスサーベイの質問項目を設定するには、次のポイントを意識します。

【パルスサーベイの質問項目の設定ポイント】

・質問項目のバランス
・全従業員に関係する項目
・必要最小限の質問数

質問項目は、全従業員に関係する項目を、バランスよく選びましょう質問数は、必要最小限です。10問前後を基本に、20問までが適切でしょう。参考に、質問項目の具体例をあげておきます。

【パルスサーベイの質問項目例】

・エンゲージメント
・満足度
・理念、ビジョン、パーパス
・コミュニケーション
・ワークライフバランス
・キャリア形成
・職場環境、働きやすさ
・従業員と組織の成長性

質問項目例の中から、「エンゲージメント」「満足度」「理念・ビジョン・パーパス」について、具体的な質問例を紹介します。 

「エンゲージメント」に関する質問例

エンゲージメントとは先に述べた通り、仕事における「思考面・情緒面・行動面」で、従業員が積極的に関与している状態のことです。質問は、この3つの側面に対する関与が明確になる問いかけを設定します。

エンゲージメントの値が低いということは、モチベーションや生産性が低下していたり、業務や職場に対して不満を持っていたりする可能性があります。従業員はもちろん、部署やチームに焦点をあてた改善プランが必要です。 

「満足度」に関する質問例

満足度とは、仕事に対する「満足感」を表すものです。満足度を測る質問は、仕事をする上での「喜び」「達成感」「成長の実感」が明確になる問いかけを設定します。

満足度の値が低いということは、仕事に対する意欲の低下を示します。何に対して不満を抱いているのか、また何を望んでいるのか、改善プランによるフォローアップが必要です。

「理念・ビジョン・パーパス」に関する質問例

理念・ビジョン・パーパスに関する質問は、企業運営に対する従業員の意見や意識を表すものです。質問は、理念・ビジョン・パーパスへの「共感・評価・印象」が明確になる問いかけを設定します。

理念・ビジョン・パーパスに関する値が低いということは、従業員に理解されていない、浸透していない、共感されていない可能性があります。理解や浸透を深める改善プランや、状況によっては、理念・ビジョン・パーパスを見直すことが必要です。

>> 本記事「ソシキビト」を運営するリアルワン株式会社では、パルスサーベイにも活用できるエンゲージメントサーベイの質問テンプレートをご用意しています。ご希望の方は、コチラからダウンロードが可能です。

パルスサーベイの導入事例

ここまで、パルスサーベイについて解説してきました。ここではさらに、パルスサーベイを導入している企業の事例を紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、従業員の状態や満足度をリアルタイムに可視化するため、パルスサーベイを自社開発。2019年の10月から継続的に実施しています。

質問数は13問。仕事に関することだけではなく、メンタルヘルスやストレスといった健康面、生活面に関する質問項目が設定されています。メールで送信されるURLにアクセスし、質問に回答するスタイルを採用。時間にして、1~2分です。

パルスサーベイの導入によって、従業員間のコミュニケーションが活性化。これまで以上に、従業員の状態や取り組みの成果を把握しやすくなりました。従業員の同意が得られれば、上司も回答結果の閲覧が可能。よりリアルタイムで、従業員の状態が把握できるシステムを構築しています。

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントは、2013年からパルスサーベイを継続的に実施しています。実施頻度は、月に1回。従業員と部署の状態を、「快晴~大雨」までの「天気マーク」5段階で回答するユニークなスタイルです。

調査結果を詳しく分析するため、「人材科学センター」を設置。時系列的にどのような変化があったのか、チームはどのような状態なのか、主観的データと客観的データの解析を中心に、詳しい分析を行っています。

この分析結果は、パルスサーベイを実施する専門チームと取締役だけが閲覧できるシステム。明確になった課題に対して個別に対応する以上に、従業員と部署の関係性の維持、状態の把握に軸を置いた制度を構築しています。

日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社は、従業員とのコミュニケーションを強化する目的でパルスサーベイを実施しています。優秀な人材を採用しても退職してしまうケースが続き、従業員の声により耳を傾ける方策の一環としての導入でした。

パルスサーベイを導入する前は、従業員の悩みを人事担当者や上司が十分把握していない状況が続いていました。しかし、導入後はコミュニケーションが活性化。1on1ミーティングに比べて匿名性が高いため、従業員の本音が集まりやすくなっています

現在は、パルスサーベイと1on1ミーティングを併用することで、社内コミュニケーションのさらなる活性化、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。 

関連記事:社内コミュニケーションを活性化させる方法

パルスサーベイが「意味ない」といわれるのは“なぜ”か?

多くの効果やメリットを持ち、企業への導入が進むパルスサーベイですが、「意味ない」といった声があるのも事実です。それは、なぜなのでしょうか。ここでは、その理由を考察します。

【パルスサーベイは「意味ない」といわれる理由】

・実施することが目的化している
・調査サイクルが短く負担が大きい
・実施しても効果がでない
・運用が滞り制度が機能していない

手段の目的化は、マンネリ化が一因です。パルスサーベイは、実施頻度が高いためマンネリ化を起こしやすく、実施すること自体が目的化してしまうのです。これでは本末転倒、意味がないでしょう。調査サイクルが短く、担当者や回答者の負担が大きいことも、調査の形骸化を招く要因です。

また、実施目的が明確でなければ効果がでないことは、デメリットの項で述べた通りです。実施頻度の割に効果がでないとなれば、「意味ない」という声があがるのもしかたがありません。

さらに、スピード感が特徴のパルスサーベイですが、実施頻度が高いが故に負担感が増し、運用が滞るといった事態も発生しかねません。こうなっては、パルスサーベイが機能しなくなってしまいます。このような理由から、パルスサーベイは「意味ない」といわれてしまうのです。

>> パルスサーベイは「意味ない」といわれる理由については、コチラの記事にも詳しく書いています。

パルスサーベイが最も効果を発揮する活用方法

大きな効果があるものの、デメリットもあり「意味ない」といわれるパルスサーベイをどう活用すればよいのか。ここでは、パルスサーベイが最も効果を発揮する活用方法を解説します。

結論から言えば、「パルスサーベイは、エンゲージメントサーベイを実施した後に行う」のが最も効果を発揮する活用方法です。理由を説明しましょう。

「調査・サーベイ」の本質的な目的は、「従業員の成長と企業の活性化」にあります。この目的を達成するには、従業員と企業が内包する「根本的な問題」を洗い出す必要があります。そこを押さえずしてパルスサーベイを実施しても、枝葉末節な問題に捉われてしまいかねません

だからこそ、まずはエンゲージメントサーベイを実施して、従業員と企業が内包する「根本的な問題」を洗い出す。そこから課題を設定し、改善プランを立案・実行する。その「検証と確認」にパルスサーベイを活用するのです。

これが、パルスサーベイの最も効果的な活用方法だと、本記事を運営するリアルワン株式会社は考えています。

関連記事:エンゲージメントサーベイとは? 

パルスサーベイツールの料金システム

パルスサーベイで効果をだすには、調査会社に外部委託し、ツールを活用することをおすすめします。ここでは、外部委託の費用感をつかむために、パルスサーベイツールの料金システムを解説します。
※料金システムは、外部委託の費用感をつかむための一例です。詳細は、別途ご確認ください。

その他、「期間限定無料」「無料トライアル」といったサービスを導入しているシステムもあります。

関連記事:パルスサーベイツールを比較する際のポイント

最後に

パルスサーベイには、大きな効果があります。しかし、デメリットも多く導入には明確な目的が必要です。記事内でも述べましたが、パルスサーベイはエンゲージメントサーベイを実施した後、状況の検証と確認のために行うのが最も効果的だとリアルワンは考えます。

リアルワンは、調査・評価の専門会社です。第一線の専門家が監修する「エンゲージメントサーベイ」で、従業員と企業の状態を「定量的かつ定性的」に可視化します。エンゲージメントサーベイで明確になった課題の改善を支援しながら、パルスサーベイにも柔軟に対応しています。

調査・サーベイの導入を検討されている実施担当者の方は、100万人超の利用実績を持つリアルワンにぜひご相談ください。

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