OJT担当の役割 求められるスキル・能力や評価方法について

『OJT』On-The-Job Trainingは、働く現場で実践的なトレーニングをする人材育成の手法で、多くの企業が導入しています。OJT担当はOJTトレーナーと呼ばれ、一対一で実践でトレーニーを指導。人材育成に当たってOJTトレーナーが担う役割は非常に重要で、その人が持つ資質や能力がOJTを成功させる秘訣といっても過言ではありません。ここでは、OJTトレーナーに求められる役割や必要なスキル、効果的な評価方法などを紹介します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

OJT担当の役割や心構え

会議

OJTトレーナーの最初の役割は、トレーニーへ仕事に向き合うための心構えを教えることになると思います。ロバート・ブリンカーホフ教授が発表した『4:2:4の法則』にもあるように、心構えやモチベーションは効果や成果に、大きな影響を与えます。OJTトレーナーはトレーニーがOJTの目的を理解し高いモチベーションが続く状態にしなければなりません。

詳しくはこちら>>『4:2:4の法則』で研修効果を最大化

OJTトレーナーは実務に必要な知識やスキルだけでなく、役割や心構えを教育することも求められています。

まずは、その役割や心構えを、次の3つの観点から見ていきましょう。

  1. 動機づけとモチベーションの持続
  2. 主体性と自律性を高め責任感を芽吹かせる
  3. 叱る・褒めるのコミュニケーション術

1:動機づけとモチベーションの持続

OJT実施に当たってOJTトレーナーは、まず動機づけから始めましょう。トレーニーが意欲を高めて積極的にOJTに向かえるように、働きかけます。トレーニーが担当する業務にはどんな意味があるのか、現場での業務の役割、その仕事はどんな社会貢献ができるかなど目的を明確にするのが大事です。やる気を高めたら、仕事のやりがいや達成感をイメージさせ、モチベーションを持続させます。研修で成果がだせた点は承認・称賛し自信を持たせるのもOJTトレーナーの役割です。

2:主体性と自律性を高め責任感を芽吹かせる

トレーニーの主体性・自律性を高めてOJTを効果的に推進するには、職務の役目と役割を認識させるのが重要です。OJTトレーナーはトレーニーの能力や意欲、信頼度を見極めて、難易度の低い業務から任せていきます。期待している成果を達成させるために、まずはビジネスの基本『報・連・相』を教えましょう。業務の位置づけを説明し作業を任せ、進捗を報告させたら随時、相談にも対応。そして、プロセスと結果を報告させ達成度を共有していくことで、トレーニーに責任感が芽生えます。

3:叱る・褒めるのコミュニケーション術

OJTを有効的にするコミュニケーションに『叱る・褒める』を繰り返す方法があります。叱るとは、感情的に『怒る』ことではなく、トレーニーの成長のために改善点を指摘すること。事実と基準を明確にしコミュニケーション中はトレーニーの優れた点も交ぜ、終話が近づいたら期待の言葉を必ずつけ加えます。褒める際にも事実と基準を目標・役割・倫理などの面から理論的に伝えましょう。また、ほかのメンバーの前で褒めて賞賛欲求を満たし、トレーニーに自信を持たせて成長の方向性を示すことも、OJTトレーナーの役割です。

OJT担当に求められる資質とは

OJT人材育成を、有効的に進める要となるのがOJTトレーナーの持つ資質です。実践でトレーニーを育て、独り立ちできるまで一対一で業務指導を行なうOJTトレーナーの性質やモチベーションはOJTの効果を左右します。そのため人選は、非常に重要で慎重にしなければなりません。

北海道大学の松尾睦教授の「育て上手のマネージャーの指導方法」によると、優れた指導者には共通する特性があり、『成長期待』『内省』『改善』のサイクルを継続的に回しているのだとか。

具体的には…、

  1. 成長期待をして可能性を信じきる
  2. 若手の内省を促すために共に考える
  3. 仕事への考え方・やり方を改善し成果に導く

以上の3点に注力して人材育成に取り組むのはコーチング理論でも提唱されており、トレーニーの思考の質も高まるといわれています。

OJTの現場でもこの3点を導入し、結果をだしている企業も多いようです。そこで、ここではOJTトレーナーに求められる資質やモチベーション、どんな人材が相応しいかなどを見ていきます。

1:OJTトレーナーは成長期待をして可能性を信じきる

OJTトレーナーにはトレーニーの成長の限界を設けず、期待して信じきれる熱い想いがある人材が相応しいでしょう。OJTトレーナーから期待されているとトレーニーが自覚することでモチベーションアップにつながり、OJTで高い効果が得られたという事例も多く見られます。人は誰でも期待されれば、その想いに応えようとするものです。こうした心理で成果があげる『ピグマリオン効果』は学校教育の場でも実証され、後に企業のマネジメントや人材育成OJTの場でも活用されるようになっています。『成長期待』ができるか否かは、OJTトレーナーを選出する際の重要な見極めのポイントです。

2:トレーナーの内省を促し支援する

『内省支援』は最近、OJT人材育成の場でも話題となり、OJTトレーナーに求められるようになった能力の一つです。そもそも内省とは、人が内観を行使する能力と基本的な自然な感情、目的および本質について深く鑑みてみるという意欲(参考:ウィキペディア)。OJTの場の内省となると、これまでのトレーニングで体験した成功も失敗も客観的に見つめ直し、本質を見極めて、自分の考え方、言動、行動について深く省みることです。OJTトレーナーはトレーニーの内省に気づかせ、より有効的に能力が発揮できるよう分析や概念化の支援も託されます。

3:仕事への考え方・やり方を改善し成果に導く

トレーニーの内省支援の次に、OJTトレーナーに求められるのが業務支援です。まずは、人事から任された人材育成計画をチェック。内容によっては、仕事への考え方、詳細な関わり方、指導方法などを改善しなければならない場合もあるでしょう。OJTトレーナーはOJTの成果の質をより良くするために、時には拡大モードのチャレンジ精神が求められます。効果を深めるために、体験の整理→省察で見つめ直し→事実を概念化→具体的なアクション、といったサイクルを回す手法も知っていると、より有効的でしょう。OJTトレーナーは場当たり的なOJTではなく、事業フェーズごとに様々な局面の育成計画ができる応用力も求められます。

OJT担当に求められる能力とは

講演している女性

OJTトレーナーが、OJT担当としての役割や心構え、モチベーションのあり方などを理解したら、その役目を実現するために必要となるのが、業務能力・スキルです。OJTのデメリットである指導力のバラつきを抑えるためにも、OJTトレーナーは業務能力・スキルを均一に備えておく必要があります。

関連記事:OJTとは? 制度の目的や具体例、メリット・デメリットを解説

OJTトレーナーに求められる能力は、次の3つです。

  1. コミュニケーション能力
  2. フィードバック能力
  3. コーチング能力

それでは、OJT担当に必要なそれぞれの能力を見ていきましょう。

1.OJT担当に必要なコミュニケーション能力

どんな場面でも良好なコミュニケーションは必要不可欠で、お互いを理解し信頼関係を深めるために大切なスキルです。特にOJTの場では、より論理的なロジカルコミュニケーションが求められます。その際にOJTトレーナーが気をつけるべきポイントが、次の3つです。

  1. 情報の整理整頓
  2. トレーニーに合わせた言葉のチョイス
  3. 伝えたい内容をブラさない

OJTで実施する業務内容を整理して、トレーニーの理解度に合せて分かりやすい言葉を使い、指示をブラさずに伝えていきましょう。

ロジカルシンキングで伝えたい情報を整理し、PREP(プレップ)法で話すスキルも身につけておけば、より高いOJT効果が期待できます。

PREP(プレップ)法とは、
1:P:Point(結論)
2:R:Reason(理由)
3:E:Example(具体例)
4:P:Point(結論を繰り返す)

1から4の順番で話の筋道を立てて伝えていく話法で、近年、ビジネスの場では一般的になっています。OJTの場でも、適切な情報伝達や意思の疎通が重要になりますから、
OJTトレーナーは指導の際に、積極的に活用してみてください。

2.OJT担当に必要なフィードバック能力

OJTトレーナーに欠かせない能力の一つが、フィードバック。OJTを有効的な結果に導くためには、適材適所で最適なフィードバックを行うのが重要です。

ここでは、フィードバックに大切な、次の3点を見ていきます。

  1. 大切なのは鮮度とタイミング
  2. 正すスキルと褒めるスキル
  3. 有効的なフィードバック4原則

1:大切なのは鮮度とタイミング

OJTのフィードバックは、鮮度とタイミングが大切です。例えば、トレーニーが何か正さなければならない点がある時は、その場で直ぐに伝えましょう。後でまとめてフィードバックをすると、記憶が薄れて改善点は不明確になりやすいです。また、良かった点もその都度伝えて、成功体験を確実にインプットさせます。記憶が鮮明なうち、タイミングを逃さずに行い意識や知識の定着を図ります。

2:正すスキルと褒めるスキル

OJTトレーナーに求められるマネジメント手法には、『任せる』『励ます』『教える』『正す』などがあります。OJT中はトレーニーとの認識をブラさないよう、正すフィードバックが重要です。また、良い点も伝えましょう。その際は具体的に褒める、努力を褒める、その場で褒めるのがポイント。トレーニーはポジティブな内容を正しく認識でき自信がついて、次への成長へとつなげていけます。

3:有効的なフィードバックのための3原則

OJTの場でフィードバックを有効的にするには、次の3原則を守って行なうことが大前提になります。

  1. 傾聴:まずは、トレーニー自身が下した、OJTの自己評価を最後まで聴ききります。
  2. 承認:トレーニーが行動したプロセスを、成果の大小に関わらず承認します。
  3. 内省:トレーニーの行動を客観的に振り返らせ、新たな気づきを誘発させます。

3つのアクションが終了した時点で、OJTトレーナーはトレーニーそれぞれの判断や対策を基にアドバイスを行ないます。このプロセスによりOJTトレーナー目線ではない、トレーニーの育成レベルにあわせた有効的なフィードバックが可能になるのです。

3.OJT担当に必要なコーチング能力

OJTの現場では、OJTトレーナーが知識やスキルを教えるティーチングが、これまでは中心になりがちでした。ただ、最近は一方的ではなく双方向でのコミュニケーションが重要であると考えられ、コーチング手法を取り入れたOJTも採用されています。コーチングは相手の話を聴き、質問や提案を行い、相手の内面から自発的に答えを導き成長へとつなげる手法です。OJTでも非常に役立つ能力になりますので、身につけておくと役立つでしょう。

OJT評価を正しくジャッジし組織を次のステージへ

OJTトレーナーはOJT が終了したら、実施したOJT全体の評価をしなければなりません。育成目標の達成度、活動プロセスの確認、OJTトレーナー自身の指導力なども振り返り、組織を次のステージへと導くのもミッションです。OJT評価をOJTトレーナーだけに委ねてしまうと、基準はあいまいで評価内容にもバラツキが生じてしまいます。OJT研修を効果的に活かすのが、難しくなります。

そこで、ここではOJT評価のスキルを高めて、正しく均質的にジャッジしOJTの効果を有効的にするポイントを紹介します。

OJT評価スキルを高める3つのポイント

OJT人材育成の評価スキルを高めるために、大切なアクションが次の3つです。

  1. OJT評価に役立つ客観的な情報の収集
  2. OJT人材育成のプロセスとゴールの確認
  3. OJTトレーナー自身の指導力の評価と改善

1:OJT評価に役立つ客観的な情報の収集

トレーニーの育成状態を正しく評価するには、作業実装の事実や数値データなどを正確に読み取り客観的な判断をしなければなりません。情報を入手する際には、現場で現実に発祥した現物の事例であることに注力し、OJTトレーナーやメンバーの思考や感情とは区別するのがポイントです。

2:OJT人材育成のプロセスとゴールの確認

OJTの振り返りとして、OJTトレーナーとトレーニー両者が、育成計画で立てた目標の達成度合いや実際の到達レベルを確認します。その差異を把握し、目標値は的確だったか、目標が達成できた要因はなんだったか、取得できたスキルは何なのか。などのOJT活動中のプロセスも振り返り、次のステップへとつなげるのが大切です。

3:OJTトレーナー自身の指導力の評価と改善

OJTが終了したらトレーニーへの評価だけでなく、OJTトレーナーが自身の指導力を評価するのも大事です。OJT人材育成のプロセスとゴールの確認はもちろん、人材育成プログラムやOJTの推進方法は有効であったかを振り返り、今後の指導力の向上や組織全体の成長課題につなげましょう。OJTトレーナー自身の成長のために、トレーニーからフィードバックをもらうのも方法の一つです。

OJT評価を均質的にするツールとは

OJTの現場では、OJTトレーナーの能力にバラツキがあるという問題をよく聞きます。この状況下でOJT評価をOJTトレーナーだけに委ねてしまうと、評価内容にも差異が生まれ、OJT研修を有効的に活かすのは難しくなります。

そんな問題回避のために、最近よく利用されるようになったのがOJT評価シートです。OJTのプロセスやゴールを客観的に振り返えられ、OJT評価を均質的にするツールとして活用されています。

OJT評価シートを活用すると、OJTトレーナーとトレーニー双方にメリットが生まれます。
それが、次の3つです。

  1. 資質や能力、強みと弱みの可視化
  2. 着地目標と現状のギャップの共有
  3. 成長の加速化でモチベーションアップ

1:資質や能力、強みと弱みの可視化

OJT評価シートはOJTトレーナーやトレーニーの資質や能力、現状の強みと弱みを可視化できるため、お互いの育成度合いを確認できます。本格的なOJTに入る前の事前準備として双方向の認識を深めておけば、スキル習得のスピードや指導のクオリティを高めることも可能でしょう。

2:着地目標と現状のギャップの共有

OJTを有効的に推進するためには、着地目標と現実とのギャップを的確に把握して最終的なゴールを目指す必要があります。OJT評価シートを活用すると、進捗と着地点の差異が一目瞭然。現状分析シートなどを導入し、さらに細かくOJTの進捗を考察していく企業も増えています。

3:成長の加速化でモチベーションアップ

進捗を確認しながらOJTを進めていくと、トレーニーが自身の成長を的確に理解できて自己効力感が高まります。OJTトレーナーはトレーニーの成長する姿を実感できてモチベーションも高まり、相乗効果につながるでしょう。

OJT評価後の重要なアクションが自己省察と総括

OJTが終了し評価を受けたあとのアクションとして重要になるのが、OJTトレーナーとトレーニーが、自身でOJTの総括をしてみることです。自己省察で、OJTのプロセスを客観的に見つめ直して、業務でこれから何をすべきなのか理解し実行に移していきましょう。OJTで習得した知識やスキル、経験や成果を忘れず定着させるには、プロセスを振り返り自らで反復と実践を繰り返す習慣をつけるのが大切です。自己省察を繰り返していくと、OJTでの学びを業務にどう活かすか、今後の課題も明確になり新たな目標設定ができるようになります。

自己省察でOJTの総括をしている企業はまだ多くないようですが、今後は実践で能力を鍛えるフェーズとして注力されてくるはずです。組織環境の変化、働き方やモチベーションの多様化などに合わせて、研修プログラムの内容も進化しなければ時代遅れのOJTとなってしまいます。経営陣や人事OJT担当には、組織の現状を見つめながらトレンドに乗った施策が求められるでしょう。

そんな背景からか、専門的な知識を持ったプロにOJTのプログラムをアウトソーシングする企業も増えています。

OJT導入の目的が進化していることもあり、外部から提案されるOJT研修のなかにはOJTトレーナーのエンゲージメントを育てるプログラムもでています。OJTトレーナーに、トレーニーのエンゲージメントを高め主体性を引き出す能力を身につけて欲しいという、経営陣や人事OJT担当の課題解決に役立っているようです。

これまでのティーチングスタイルのOJTは、受け身の姿勢で主体性がないという思考が、昨今、強まっています。『教える・動機づける』から『仕事がしたい』というモチベーションを引きだし、エンゲージメントを高めるのもOJTの目的とされてきているのです。今の風潮として見られるのは、仕事がおもしろいから会社にいくのが楽しい。社員がハッピーだと組織が活性化し、結果として成果につながり業績が上がる、といった流れへと変革しています。OJTトレーナーには、そんな資質やモチベーションも求められているのです。

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カーン教授はエンゲージしている人は、「自分自身を仕事上の役割に結びつけ、そこから得られる力を利用している。すなわち、エンゲージしている人は、身体的、認知的、精神的に自分の仕事上の役割と関わっている」と説いています。例えば、OJTトレーナーとトレーニーの両者が日々の業務やOJTに対しエンゲージメントが高ければ、自分自身の役割と同一化でき、頭も、心も、体も、ポジティブに、熱心に取り組めます。このアクションやメンタルの状態を保つことが、OJT成功の秘訣ではないでしょうか。

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