モチベーションの低下による退職を防ぐ5つの方法~企業の事例も紹介

仕事に向き合うモチベーションの状態は、企業の生産性や成長性を左右するばかりでなく、社員の退職にも関係する大きな要因です。人材獲得競争が激しい昨今、貴重な人材の退職を防ぎ、いかに定着させていくのかは、人口減少社会に直面する企業にとって避けては通れない課題です。

では、仕事に対するモチベーションを向上させ、退職を防止するにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、モチベーションの低下による退職を防ぐ5つの方法を解説すると共に、退職防止に取り組む企業の事例を紹介します。

【本記事で得られる情報】

・モチベーションの低下と退職の相関関係
・モチベーションが低下する理由
・モチベーションを上げる必要性
・退職を防ぐ5つの方法
・退職防止に取り組む企業の事例

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

低いモチベーションは退職につながる

仕事のモチベーションが低い社員は、退職するケースが多くなります。それは、なぜでしょうか。ここでは、モチベーションの低い社員が退職に至るプロセスを考察します。

モチベーションが低い社員には、次のような傾向があります。

【モチベーションが低い社員の傾向】

・仕事に対する「やらされ感」が強い
・仕事の効率が悪く生産性が上がらない
・考え方が保守的でマイナス思考が強い
・チームに溶け込めず孤立している
・キャリア形成を考えていない

モチベーションが低い社員は、仕事に対する強い「やらされ感」を持っています。「言われたからやる」「仕方なく動く」など、自発的ではないため、仕事の効率が悪く生産性が上がりません。また、考え方が保守的でマイナス思考になりがちです。

自ら積極的にコミュニケーションをとることもなく、チームに溶け込めず孤立している状態です。これでは、仕事に対して前向きな気持ちを持てるはずがありません。仕事は単なる作業になっていき、キャリア形成を中長期的に考えることもなくなってしまいます

当然、仕事や組織に対する満足やエンゲージメントも失われてしまうでしょう。こうして、最終的には「退職」という選択につながっていくのです。 

関連記事:モチベーションが低い社員と高い社員の特徴

仕事のモチベーションが低下する理由

ではなぜ、モチベーションは低下するのでしょうか。ここでは、仕事のモチベーションが低下する理由を考察します。

【モチベーションが低下する理由】

・目標設定が不明確
・職場の人間関係
・評価基準に対する不満
・給与や働き方への不満
・職場の風通しが悪い

詳しく解説します。

目標設定が不明確

目標設定が不明確な場合、モチベーションは低くなります。目標がなければ、気持ちが前向きになることはありません。これでは、モチベーションが上がるはずもないでしょう。原因は、「理念・ビジョン・パーパス」が浸透していないことです。目指すゴールが見えなければ、「やらされ感」の中で仕事をすることになります。

モチベーションを上げるには、「理念・ビジョン・パーパス」を共有し、目標を設定する必要があります。ゴールが明確になれば、仕事の達成感や満足感が高まり、組織に対するエンゲージメントも高まっていくのです。

職場の人間関係

職場の人間関係は、モチベーションに関わる大きな要素です。人間関係に対する疲れやストレスは、モチベーションの低下に直結します。職務に集中できないばかりか、仕事に向き合う意欲も減ってしまうのです。

モチベーションと人間関係は、大きく関連しています。活発なコミュニケーションや称賛し合える環境を整えることが、良好な関係性を構築します。人間関係がモチベーションに与える影響を見据え、職場の環境改善に取り組むことが求められるのです。

評価基準に対する不満

評価基準に対する不満は、モチベーションを大きく低下させます。「頑張りが評価されていない」「評価が偏っている」など、評価に不満や疑問があればモチベーションは低下するでしょう。

明確な評価基準を設定し共有することで、モチベーションの向上が期待できます。インセンティブがあれば、なお効果的です。社員の誰もが納得する、公平で透明性の高い評価基準を設定し制度理解を深めましょう。ビジネス環境の変化に応じて修正を加えることも、忘れてはならないポイントです。

給与や働き方への不満

給与や働き方への不満は、モチベーションが低下する大きな理由です。頑張っても給与が少なくては、社員のモチベーションは上がりません。給与は、働く原動力なのです。

また、多様化する働き方への対応も、モチベーションを左右します。コロナ禍で、一気に広がったリモートワーク。仕事内容によっては、在宅勤務が可能でしょう。育休や介護休暇、有給休暇の取りやすさも大切です。残業を減らすこと、裁量権を与えることも、多様化する働き方への対応といえます。

職場の風通しが悪い

職場の風通しが悪い場合、モチベーションは低下します。なぜなら、自由闊達な意見の交換ができないからです。風通しを良くするには、言いたいことが言えて、受け入れてもらえる「心理的安全性」が必要です

社員一人ひとりがリスペクトされ、多様な意見に共感できる環境が、モチベーションを高めます。そのためには、心理的安全性が必要であり、そういった環境こそが長く安心して働いていける職場といえるのです。

関連記事:社員のモチベーション低下で起こること

仕事のモチベーションを上げる重要性

退職を防ぐには、仕事のモチベーションを上げる必要があります。人材の獲得が難しい現在の状況を考えれば、必須の取り組みといってよいでしょう。

モチベーションを上げる効果は、退職を防ぐだけではありません。モチベーションの高い社員は、多くの価値を生み出します。具体例をあげましょう。

・新しい分野や難しいミッションにもチャレンジする
・簡単に諦めずに成果を求める
・多様性を受け入れチームをまとめる
・周りを巻き込み目標に向かって前進する
・仕事や組織の状況を俯瞰して調整を行う

モチベーションが高い社員は、能動的に行動します。成長意欲も旺盛です。社員一人ひとりのモチベーションが高まれば、企業全体の成長につながるのです。企業の価値は、モチベーションの高い社員から生み出されるといっても過言ではありません。 企業は、この重要性を認識し仕事のモチベーションを上げていく必要があるのです。

関連記事:社員のモチベーションを管理し上げる方法

モチベーションの低下による退職を防止する5つの方法

モチベーションの低下による退職を防止するには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、その方法を解説します。

【モチベーションの低下による退職を防止する5つの方法】

1.チームミーティングを実施する
2.1on1ミーティングを行う
3.衛生要因と動機づけを満たす
4.モチベーションマネジメントに取り組む
5.サーベイ(調査・測定)を導入する

ひとつずつ見ていきましょう。

1.チームミーティングを実施する

チームミーティングを実施することは、モチベーションの低下による退職防止につながります。チームミーティングとは、チームメンバー同士で行うミーティングのことです。情報共有、フィードバック、課題解決が主な目的です。中でも重要な目的は、状況の把握とコミュニケーションの活性化でしょう。

モチベーションの低下を防ぐには、モチベーションの状況を把握し、状況に応じた対策をとることが重要です。さらに、コミュニケーションを活性化し相互理解を深めることが、モチベーションの維持と退職防止につながるのです。

2.1on1ミーティングを行う

1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に行う1対1の面談のことです。その目的は、モチベーションの向上と部下の育成にあります。大きな特徴は、双方向というコミュニケーション形態です。

モチベーションが低下する理由のひとつに、風通しの悪さがあります。1on1ミーティングによって、意見の交流を図れば相互理解が進みます。信頼関係の構築、情報共有にも有効です。週1回〜月1回といった、短いスパンで実施することが、モチベーションの向上と退職防止に効果的です

3.衛生要因と動機づけ要因を満たす

衛生要因(給与、労働条件、福利厚生、経営方針、人事労務体制、人間関係など)は、仕事の「不満」にかかわる要因です。一方、動機づけ要因(達成感、仕事内容、周囲の承認、責任、昇進昇格、裁量権、成長機会など)は、仕事の「満足度」にかかわる要因です。

2つの要因は、モチベーションに大きく関わります。モチベーションを上げるには、衛生要因と動機づけ要因を同時に満たす必要があります。退職防止に向けた取り組みに、必ず落とし込みたい項目です。

4.モチベーションマネジメントに取り組む

モチベーションには、2つの種類があります。

【外発的モチベーション】
外側からの刺激によって生まれるモチベーション(称賛・承認・金銭・名誉など)

【内発的モチベーション】
内面からの刺激によって生まれるモチベーション(主体性・自発性・能動的姿勢など)

モチベーションマネジメントとは、この2つのモチベーションを企業がマネジメントすることです。モチベーションを管理し、高い意欲で仕事に向き合えるよう支援します。モチベーションの低下による退職を防止する、重要な施策といえるでしょう。

関連記事:モチベーションマネジメントの手法

5.サーベイ(調査・測定)を導入する

サーベイ(調査・測定)を導入することも、モチベーションの低下による退職を防ぎます。なぜなら、サーベイを実施することで組織の課題を改善し、満足度やエンゲージメントを高めることができるからです。満足度とエンゲージメントは、モチベーションと深い相関関係があります。

導入するサーベイは、従業員満足度調査(ES調査)エンゲージメントサーベイが適切です。

【従業員満足度調査(ES調査)】
従業員の満足度を測定するサーベイです。働きやすさや人間関係、給与や福利厚生、ワークライフバランスといった項目についてアンケート調査を行い、従業員の満足度を可視化します。

【エンゲージメントサーベイ】
従業員と組織の「結びつき」を測定し、仕事や組織に対する関与の度合いを可視化するサーベイです。エンゲージメントとは、仕事や組織と向き合う従業員の「思考面・情緒面・行動面」における関与の度合いのことです。

どちらのサーベイも、調査から浮かび上がった課題を改善することで、満足度やエンゲージメントを向上させる効果があります。満足度やエンゲージメントを向上させることでモチベーションを上げ、退職を防止することができるのです。

関連記事:従業員満足度調査(ES調査)とエンゲージメントサーベイの違い

モチベーションを上げ退職防止に取り組む企業の事例

ここからは、モチベーションを上げ退職防止に取り組む企業の事例を紹介します。

スターバックス・コーヒー

スターバックス・コーヒーは、立場に捉われず多様な意見を言い合える環境を整えることで、退職防止を進めています。導入した施策は、「コーチング」です。「スタバが退職防止対策?」と思われるかもしれませんが、以前は高い離職率に悩んだ時期がありました。そこで、様々な施策を試し、最終的に導入したのがコーチングです。

コーチングによって、自己成長や目標管理への意識が高まり、仕事に向き合う姿勢に変化が起きます。仕事のモチベーションが高まり、接客レベルが向上。仕事に対する満足度もアップし、スタッフの定着が進んでいます。

関連記事:コーチングとは?

アマゾン・ジャパン

アマゾン・ジャパンは、スタッフの退職を防ぐために、福利厚生の充実化と働き方の改革に取り組んでいます。具体的には、有給休暇はもちろん、産休や育休、介護休暇といった、休暇・休業を取得しやすくすること。また、子育て支援やフレックスタイムといった働きやすさの追求です。

他にも、学びを深める学習プログラムの提供や自己啓発を支援。スタッフのキャリア形成も、積極的にサポートしています。スタッフと企業が相互に支えあう文化を作ることで、仕事のモチベーションが向上し、スタッフの定着率を高めることに成功しています。

日本IBM

日本IBMは、社員の学びや自己成長をサポートすることで、仕事に対するモチベーションの維持に努めています。その結果、退職する社員が大幅に減少。モチベーションの維持と、退職防止を両立させています。

具体的には、国内の社員向けに「SkillsBuild」と呼ばれる学習コンテンツを提供。ITの基礎や専門知識を深める、約6,000本の学習コンテンツを無料で学べる環境を整えています。また、社員の健康面も積極的にサポート。ストレスチェックやメンタルヘルスを支援することで、社員が安心して働ける職場環境を確立しています。

関連記事:モチベーションマネジメントに取り組む企業の事例

最後に

今回は、モチベーションの低下による退職を防ぐ方法を解説しました。紹介した5つの方法は、どれも退職防止に効果的です。その中で、意識しなければならないのは「モチベーションと組織の状態を把握する」ことです

それには、サーベイの導入をおすすめします。サーベイは、モチベーションと組織の状態を客観的かつ定量的に可視化すると共に、退職につながる組織課題を明確にします。組織課題を改善プランに落とし込むことで、より効果の高い退職防止の施策を構築できるでしょう。

リアルワン株式会社は、サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」で、モチベーションと組織の状態を可視化し組織課題を明確にします

モチベーションと組織の状態を把握するために、サーベイの実施を検討される企業様は、リアルワンご相談ください。お問い合わせは、下記リンクから受け付けています。

>> リアルワンへのお問い合わせはコチラのフォームをご利用ください。