エンゲージメントサーベイは質問項目が重要!指標や活用方法まで解説

働き方やライフスタイル、価値観が多様化する中、従業員はこれまで以上に「働きがい」を求めています。企業側も業績や生産性向上のために、エンゲージメントが重要になるという認識があるでしょう。

従業員のエンゲージメントを数値として可視化し、継続的な取り組みを行うために役立つのがエンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)です。ただし、効果的なエンゲージメントサーベイを行い、活用するためには適切な質問項目を作成することが重要になります。

この記事では、エンゲージメントサーベイの目的や得られる効果、質問項目作成のポイント、指標についての考え方、具体的な活用方法までを解説します。質問項目の作成にお悩みの人事責任者、担当者の方はぜひ参考にしてください。

【本記事で得られる情報】

・エンゲージメントサーベイの概要

・エンゲージメントサーベイの質問項目作成のポイント

・エンゲージメント指標

・エンゲージメントサーベイの代表的な調査方法と質問項目例

・エンゲージメントサーベイの活用方法

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

エンゲージメントサーベイとは

資料

エンゲージメントサーベイを説明するにあたり、エンゲージメントについておさらいします。その上で、エンゲージメントサーベイの目的と、得られるメリットについて解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)は、一般的には誓約や婚約を意味する用語です。人事労務や健康経営の観点からは、「会社に対する愛着」や「企業と従業員の心の結びつき」など、別の意味を有しており、定義はさまざまです。

リアルワンでは、エンゲージメントを「1.思考面、2.情緒面、3.行動面の3つの側面において、自己が仕事に対し積極的に関与している状態」と定義しています。

エンゲージメントの高い従業員は、「頭も、心も、体も」、仕事に対して積極的(ポジティブ)に関わり、仕事で高い成果やパフォーマンスを上げるとともに、周囲に良い影響を与えるなど、企業や組織に大きく貢献します。

エンゲージメントサーベイの目的

エンゲージメントの重要性の高まりにはいくつかの理由があります。

一つには、「人的資本経営」の考えの普及です。従来のように人材をコストとして捉えるのではなく、持続的な価値をもたらす資本として位置づけ直し、投資の対象とする経営を指します。

また、昨今の人材の流動性の高まりを受け、優秀な人材の流出を防止し、確保するために、エンゲージメントの向上を図る目的もあります。

さらに、働き方やライフスタイル、価値観が多様化が進む中で、従業員の意見を反映したきめ細やかな施策の立案、取り組みの検討が必要になっています。エンゲージメントを高めることは知人を自社に紹介するリファラル採用への効果も期待できます。

こうした背景から、企業や組織の状態を数値として把握した上で、適切な施策やアクションプランを立案し、持続的な運用を回すために、エンゲージメントサーベイを実施する企業が増えています

エンゲージメントサーベイのメリット

組織全体から部署単位まで、活性度合いの詳細な把握が可能になります。会社全体だけでなく、部署や拠点、役職、年齢層や勤続年数など、より詳細な単位の状況がわかるため、それぞれに適切な対策を講じることが可能です。

また、数値化することで、1年に1回または数年に1回、継続的に調査を行うことで定点観測ができるようになり、施策の効果の検証や、モニタリングも可能となり、PDCAサイクルの精度が向上します。

従業員の意見を反映した施策や取り組みになり、納得感が得られやすい点もメリットの1つです。調査を実施すること自体が、従業員のエンゲージメントを重視しているというメッセージになり、満足度を高める効果も期待できます。

なお、エンゲージメントサーベイの概要については、以下の関連記事も参考にしてください。

関連記事:エンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)とは

質問項目作成のポイント

エンゲージメントサーベイを実施するにあたり、質問項目を準備します。この質問項目の内容が調査の効果を左右するとともに、その後の活用方法にも影響しますので、重要なポイントです。

会社や組織の課題が明確になるように

会社や組織が抱える課題に対して、適切な施策を立案するために、課題が明確になるような質問項目を用意する必要があります。何のために実施するのか、解決すべき課題が不明瞭なままでは、有益な効果は得られません。

自社の方針や戦略を踏まえて、調査結果を意思決定に役立てるという意識を、人事部などの現場だけでなく、経営者や経営層と事前に共有しておくことが大切です。

継続的な定点観測を前提とする

エンゲージメントサーベイは単発的な実施ではなく、継続的な定点観測が前提です。調査に基づいて立案した施策やアクションプランの効果測定のため、比較可能な質問項目を用意することが条件になります。

また、働き方やライフスタイル、価値観は時代とともに変化し続けます。継続的に実施することで、取り組み内容を絶え間なく改善していくことが真のエンゲージメントの向上につながります。

従業員の負担にならないように配慮する

エンゲージメントサーベイは、年1回や数年に1回といった頻度が一般的です。頻度は多くありませんが、従業員は回答するために時間を割く必要があります。調査によって、従業員が不満を感じてしまうようでは本末転倒です。

そのためにはエンゲージメントサーベイにアクセスしやすい仕組みや、質問項目の数、わかりやすく重複感のない質問など、従業員に配慮した質問項目とすることが大事です。

エンゲージメント指標

エンゲージメントサーベイの測定では、「1. 思考面」「2. 情緒面」「3. 行動面」の3つの側面から測定を行い、従業員のエンゲージメントの状態を評価します。

エンゲージメントが高い状態とは、頭の中も、心の中も、体でも仕事にポジティブに関わっている状態を指します。一方、低い状況とは、頭も心も体も仕事には関与していない状況を指します。

思考面

従業員本人が、自身の仕事に対して、よく考え集中している度合いを測定します。

情緒面

従業員本人が、仕事を楽しいと感じ、熱意を覚える度合いを測定します。

行動面

従業員本人が、自らの行動として積極的に仕事に従事している度合いを測定します。

代表的な調査方法と質問項目例

本章ではエンゲージメント調査の代表的な方法をご紹介します。また、リアルワンで実際に用意している質問項目についてもご紹介します。自社でアンケートを作るときの参考にしてみてください。

eNPS

eNPSは、従業員エンゲージメントを測る指標のことです。「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の頭文字を取り、eNPSと呼ばれています。

eNPSでは「自分の職場をどれくらい知人・友人に薦めたいか」という質問を行い、職場に対するロイヤリティ(忠誠心)を測ります。10段階の評価を通じて、従業員の本年を精緻に把握することが可能です。

eNPSは、特に従業員の離職率や定着率に課題を抱えている企業向けの調査といえます。eNPSのスコアが高い企業では、低い離職率、積極的なリファラル採用などの傾向が見られます。

Q12(キュートゥエルブ)

Q12は、アメリカ最大の調査会社「ギャラップ社」と心理学者フランク・L・シュミット博士が共同開発した調査方法です。

質問の数はわずか12問ですが、質問にさまざまな要素が含まれており、会社やチームがより高いパフォーマンスとエンゲージメントを得るために必要な課題を見つける手がかりとなります

ギャラップ社では、Q12がベースの従業員エンゲージメント調査ツールの販売も行っています。それを活用すればエンゲージメントサーベイが初めての企業も早期に実施ができます。

リアルワンの質問項目例

リアルワンのエンゲージメント調査の質問項目を一部抜粋してご紹介します。 

回答は5段階で評定します。(5.そう思う、4.ややそう思う、3.どちらともいえない、2.あまりそう思わない、1.そう思わない)。

1.思考面に関する質問

  • 日々仕事に一生懸命取り組んでいる
  • 仕事中、仕事に意識を集中している

2.情緒面に関する質問

  • 良い仕事をした時は周りから評価され認められている
  • 仕事から達成感を得ている

3.行動面に関する質問

  • 従業員の能力開発のための教育制度が十分用意されている
  • 休日や休暇は十分とれている

これらの選択式の設問のほか、「日々の仕事を充実し、やりがいを感じられるようにするため、会社は何を改善すると良いと思いますか?」といった設問を設けて、自由回答欄を用意します。

「ソシキビト」を運営するリアルワンでは、エンゲージメント調査の質問テンプレートをご用意しています。以下のリンクからダウンロードが可能です。ぜひご活用ください。

>>リアルワンのエンゲージメント調査/テンプレートはコチラから

エンゲージメントサーベイの活用方法

エンゲージメントサーベイによって得られた回答の活用方法について解説するとともに、他社の具体的な活用事例についてご紹介します。

詳細な単位での効果的な対策の立案

詳細な質問項目を用意して調査を実施することで、調査後、組織全体だけでなく拠点や部署単位で効果的と思われる対策を立てることができます。また、優先的に改善が必要な拠点や部署、階層が明らかになります。

例えば、エンゲージメントサーベイの結果、高ストレス状態の部署が判明した場合に、その部署の従業員に対して短期間に簡易的な質問を繰り返すパルスサーベイを実施し、細やかなフォローやケアをすることなどが挙げられます。

実際に、日清食品ホールディングス株式会社では、2017年からコミュニケーション強化のために実施している1on1を有効活用するため、定期的にパルスサーベイによる効果測定を実施し、離職防止のためのアクションにつなげています。

数値を根拠にした改善サイクルの運用

個々人の経験や勘に頼るのではなく、従業員のエンゲージメントを数値として把握し、数値を根拠にしたアクションプランを立案できることも、エンゲージメントの活用方法の一つです。

また、数値化により、次回の調査時に比較可能な質問項目を用意することで、施策の効果測定ができるようになり、改善や軌道修正など、PDCAサイクルの適切な運用にもつながります。

事例としては、東京海上日動火災保険株式会社では、調査を通じて、事前に「これが課題ではないか」と仮説を立てていた項目が、実際は従業員の期待度が低く、解決する優先度が低いことが判明したとのことです。同社では、期待度と満足度の両面から従業員の思いを測ることで分析の精度を高め、改善しています。

従業員と組織の間のギャップ解消

従業員の声が経営に直接届くことで、双方の認識のギャップを埋めて、不満を解消することにも活用できます。従業員の声を会社や経営が汲み上げることにより、効果的な施策やアクションプランの立案につながります。

一般的に望ましいとされる高い給与水準や福利厚生の制度を整備したとしても、それだけで従業員のエンゲージメントや満足度が高まるとは限りません。経済的な報酬だけでなく、精神的な報酬も働きがいを高める要素の一つです。

ハウステンボス株式会社では、エンゲージメントサーベイの効果として「認識できていなかった組織状態や課題が明らかになった」ことを挙げています。同社では、従業員の幸せを大切にすることが業績向上につながることを、自社を通じて証明することにチャレンジしています。

まとめ

エンゲージメントサーベイを通じて、従業員の意見を汲み取ることで会社や組織の抱える課題が明確になり、効果的な施策やアクションプランの立案につながります。

また、エンゲージメントサーベイは単発の実施ではなく、継続的な定点観測が前提です。エンゲージメントを数値(スコア)として把握することで、数値を根拠にした施策の改善が図れます。

そのためには、質問項目の内容が調査の効果を左右しますので、作成のポイントから指標についての考え方、具体的な活用方法までを解説しました。

最後に、リアルワン株式会社は、調査・評価の専門会社です。信頼性の担保された、エンゲージメント調査」で従業員の成長と組織の活性化をサポートします。「組織の今を可視化したい」とお考えの方は、ぜひリアルワン株式会社のエンゲージメント調査をご活用ください。