コーチングとは?やり方やメリット、注意点を初めての方にもわかりやすく解説

コーチングとは、相手が抱える問題や目標達成に向けて、コーチがサポートする手法で、ビジネスにも活かすことができます。コーチングは、自己成長や目標達成に向けて、自己認識や自己理解を深める手段として注目されています。本記事では、コーチングの基本的な目的や手法、メリット、注意点などを解説します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

コーチングの定義や目的とは

コーチングとは、個人やチームが目標を達成し、成長するためのプロセスを支援することです。「コーチング」という言葉は、英語でもともと馬車のことを指す「coach(コーチ)」から来ています。この「coach」は後に、人を目的地に導く「案内役」という意味でも使われるようになりました。そして現在では、スポーツやビジネスなどにおいて、人を指導しサポートする役割を持つ人を「コーチ」と呼んでいます。コーチングの種類は様々で、ビジネスやスポーツ、カウンセリング、教育などに活用されます。

コーチングの目的は、相手の自己啓発や自己成長をサポートすることです。具体的には、聴き取りや質問、フィードバックなどの手法を用います。相手の目標やニーズに合わせた質問や課題設定を行い、自己解決できるようにサポートすることがコーチングの特徴です。つまりコーチングとは、相手自身がもともと持つ能力を引き出すことで能力を高め、目標達成や成長を促進する手段なのです。

コーチングの主な目的

コーチングの目的について、もう少し具体的に見ていきましょう。主な目的は以下のようなものです。

1.目標達成の支援
コーチングの対象となる人が設定した目標に向けて、具体的なアクションプランを作成し、目標達成に向けて行動することを支援します。

2.能力の開発
相手が内在的に持つ能力を引き出し、開発することで、自己成長を促進します。例えば自己啓発や自己管理能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ能力など、様々な能力を伸ばすことが期待できます。

3.問題解決の支援
相手の抱える課題や問題を共有し、質問やフィードバックを通じて解決策を見つけられるよう支援します。

4.自己認識の促進
相手自身が持つ価値観や信念、行動パターンを客観的に見つめ直し、自己認識を深めます。これにより、相手が自信を持てるように支援します。

5.モチベーションの向上
コーチングを受けることで、目標達成に向けてモチベーションを上げ、継続的に努力できるようにサポートします。

6. 新たな視点やアイディアを得る。
コーチングを受けることでコーチからの問いかけやフィードバックで客観的な視点を得ることが出来ます。相手が持っている固定観念やメンタルブロックを取り外し、新たな解決策やアプローチ方法を見出すことができるようにサポートします。

これらの目的を達成するために、コーチングでは具体的なアクションプランを立て、実行していきます。

ビジネスにおいてコーチングを行うメリット

では、ビジネスの一助としてコーチングを行うメリットにはどんなものがあるのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。

自己理解と自己成長を促す

コーチングでは自分自身の経験や現状を基に、より実践的なアドバイスを受けることができます。これが、自己啓発書などから得られる知識と異なる点です。ビジネスコーチングによって、従業員は自分自身の強みや課題を客観的に認識することができ、自己理解や自己成長につながります。

目標設定や計画の策定がしやすくなる

ビジネスコーチングでは、具体的なビジネス目標の達成をサポートしていきます。対象となる従業員はコーチングによって、自分自身が置かれている状況や課題を客観的に見ることができ、目標設定や計画策定がしやすくなります。

スキルと成果の向上につながる

ビジネスコーチングによって、従業員はその状況に適したスキルやアプローチ、周囲とのコミュニケーション方法を学ぶことができます。また、自分自身がもともと持つ能力や経験を最大限に活かせるようになるでしょう。そのため、スキルや成果の向上が期待できます。結果として、リーダーシップ力の向上にも繋がります。

モチベーションアップにつながる

ビジネスコーチングは、モチベーションの向上にもつながります。コーチングによって自身の強みや課題を客観的に認識した従業員は、その課題を克服するための目標や計画を立てられるでしょう。そして、自身の目標達成に向けてモチベーションを高められます。

コーチングのやり方

ここでは、ビジネスコーチングのやり方と、その際に必要となるスキルについて紹介します。

コーチングの基本的な流れ

コーチングは一般的に「傾聴、質問、承認」という手法3つをベースに、以下のような流れで行われます。

1)相手の状況把握

まずは相手の話に全神経を注ぎ、理解するために「傾聴」します。相手の話を遮らず、表情や言葉遣いなどから相手の気持ちを察しながら聞きましょう。

2)相手の現状分析

相手の話を聞きながら、深めるべきポイントや改善点を見出して「質問」をします。相手自身の自己理解を深めるたため、適切なタイミングで適切な質問を投げかけます。

3)相手の自己認識促進

その次にコーチは「承認」をしましょう。相手の発言や行動を肯定的に受け止めることで、相手の自信を高めることができます。承認の具体例は、相手の成果や取り組みを褒めたり、達成感を共有したりすることです。相手が自己承認できるようになることが大切です。

4)相手の目標設定

自己理解、自己認識が深まった状態になってから、次のステップとしては目標設定となります。相手が求める在りたい姿を具体木的に描き言語化し、まずはスモールステップから、期日を切った目標を設定します。

5)目標に向けてのアクション伴走

目標が明確になったらあとは目標に向けてのアクションです。 設定した目標に対して具体的なアクションプランを元に達成までのプロセスを伴走します。相手は独りにならず、状況を見ながら適切にコーチが微調整を入れていくので、相手は楽に、目標を達成することが出来るのです。

6)フィードバックをする

一旦一つの目標に向けて伴走して結果、どんな改善が出来たのか、また今後どんな改善余地が見られるのか、コーチが相手にフィードバックをします。これにより、相手は明確に自分の成長を感じ、次なる目標を持つことが出来るのです。

相手とのコミュニケーションの中で「傾聴、質問、承認」を上手く使い分けることで、より深くコミュニケーションが取れるようになります。

コーチングに必要なスキルや技術とは

ビジネスコーチングを行うために、コーチに必要とされるスキルや技術を、1つずつ具体的に見ていきましょう。

コーチング技術

コーチング技術とは、コーチングを受ける相手が自己啓発や成長を実現できるように導くスキルです。そのために、コーチは相手の目的や目標を理解した上で、適切な質問を投げかける必要があります。コーチング技術は、ビジネスコーチングにおいて最も重要なスキルと言えます。

コミュニケーションスキル

ビジネスコーチングでは、コーチングを受ける相手とのコミュニケーションが非常に重要となります。相手の心情や思考プロセスを理解し、適切なアドバイスやフィードバックをするために、コミュニケーションスキルは不可欠です。

問題解決スキル

ビジネスコーチングでは、コーチングを受ける相手の課題を適切に分析し、解決策を導き出す必要があります。そのため、コーチには問題解決スキルが求められます。

リーダーシップ

ビジネスコーチングにおいては、コーチとコーチングを受ける従業員、双方がリーダーシップを発揮することで効果が期待できます。コーチは従業員を導き、相手が自己成長や目標達成ができるようにサポートしなければなりません。一方で、従業員は自身の人生やビジネスの方向性を決め、責任を持って行動するために、リーダーシップが求められます。

コーチングの具体的な事例

ここでは、事例別にコーチングの具体的なポイントをお伝えします。

マネジメント層向けのコーチングのポイント

・チームや組織のパフォーマンスを向上させる。

そのためのポイント、流れは以下の通りです。

①現状分析、問題点の洗い出し
②改善策を提案
③改善策を実行

上記の流れの中でコーチはマネジメント層の方に伴走し、問題の洗い出しの壁打ち、改善策を提案する手前の壁打ちをします。そして、改善策を実行した結果をフィードバックします。マネジメント層の従業員も自己評価とコーチからのフィードバックを照合することで、成長を促すことができます。

組織力を高めるためのコーチングのポイント

・チーム全体としての目標を設定、チーム全体の意識統一

そのためのポイントは以下の通りです。

①コミュニケーションの活性化
②役割分担の明確化
③フィードバック

上記の流れの中で、コーチングを通じてメンバー同士のコミュニケーションを促進し、信頼関係を築きましょう。コミュニケーションの改善には、傾聴やフィードバックの技術が必要です。

また、チームメンバーの各自の役割や責任を明確化し、相互に協力し合える体制を構築しましょう。ここでもコーチングのスキルと使って意思疎通を図ることが大切です。

そして最後にリーダーはチームメンバーに対して具体的にフィードバックしましょう。これにより、メンバーは自己評価とリーダーからのフィードバックを照合し、より自己理解を深め成長につなげることが出来ます。

従業員の目標達成に向けたコーチングのポイント

・目標の明確化と優先順位の設定

そのためのポイントは以下の通りです。

①リソースの活用と環境整備
②具体的なアクションステップの策定
③定期的な進捗管理

上記の流れでまずはメンバーが目標達成に向けて互いに協力し合う環境を整えることが大切です。

そして、目標が明確になったら次は具体的なアクションプランを立てることです。立てているプランが現在地から乖離していないか、しっかりと成功体験を積み重ねることが出来るスモールステップになっているか、ここはコーチがしっかりと伴走して状況を見ていく必要があります。

そのうえで、アクションプランの実行に至ります。定期的な進捗確認、と評価・修正は従業員のモチベーションを維持するうえでとても重要です。ポジティブなフィードバックを行い、自信を付けて進めていけるようにしっかりとサポートすることが大切です。

また、目標達成後も、持続的な成果を得るために新たな目標の設定や成長サイクルを形成してサポートを続けていくことも大切です。

コーチを選ぶ際に意識すべきこと

ビジネス上で非常に役立つコーチング。しかし実施するときには、注意すべき点もあります。特に、コーチングを行うコーチを選ぶ際は、以下の点に気を付けましょう。

コーチの資格や実績を確認する

一般的にコーチは、民間資格を認定している団体のコーチ養成プログラムなどを受講し、スキルを学んだ上でサービスを提供します。しかし、ビジネスコーチングを行うコーチに必須の資格はありません。

それゆえ、コーチの人選次第ではなかなか効果を得られない可能性も出てきます。そのため、依頼するコーチが正しい手法を学んでいるかどうか、保有資格や実績を確認することが重要となります。

コーチと従業員の相性を確認する

コーチングは、コーチとコーチングを受ける相手が直接対話することで成り立ちます。そのため、コーチと従業員の相性は非常に重要です。依頼するコーチは過去にどんなコーチングの経験があるか、行いたいコーチングの目的に合わせて確認するとよいでしょう。また、コーチの性格や価値観も大切なポイントとなります。

期間やセッションの回数を適切に設定する

ビジネスコーチングの期間は、数ヶ月から半年程度が一般的です。場合によっては、予定していた終了時期より早く目標を達成できることもあります。

セッションの回数については、週1回から月1回程度が一般的でしょう。ただし、対象となる従業員の目標設定や状況によっては、回数を増やす必要があります。また、セッションの回数が多くても、相手が自己成長している実感を得られなければ意味がありません。セッションの回数よりも従業員の成長や目標達成にフォーカスし、柔軟にアプローチしましょう。

適切な費用を知っておく

ビジネスコーチングにかかる費用は、コーチの質やサービス内容によって大きく異なります。高いレベルの専門知識や経験を持つプロに依頼する場合、費用が高めに設定されていることがあるでしょう。サービス内容については、例えばビジネスの起業支援などのコーチングの場合、費用が高くなる傾向があります。

一般的に、ビジネスコーチングの費用は1回あたり数千円から数万円とされます。1回あたりの時間やセッション数、期間などによっても費用は異なります。例えば、1時間のセッションを週1回、3か月間行う場合、合計で10万円から20万円程度が一般的な相場です。

決して安くない費用がかかる一方で、ビジネスコーチングを行うと従業員の成果や目標達成に繋がるため、投資としての価値もあります。質の高いコーチングを実施するためには、コストパフォーマンスを比較して適切な料金を支払うことが重要です。

従業員の成長を促すためにコーチングの活用を

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ビジネスコーチングは、従業員の自己成長を促進し、仕事上の目標達成を支援する手法です。ビジネスコーチングの具体的な事例としては、スタートアップ企業の創業者向けコーチング、チーム内のコミュニケーション改善、キャリアアップを目的としたコーチングなどがあります。その他にも、プレゼンテーションスキルの向上や、戦略的な計画の立案、リーダーシップの強化などが期待できます。

ビジネスコーチングには以上のように多くのメリットがある一方、さまざまな注意点もあります。質の高いコーチングを受けるためには、コーチとの相性や実施する期間と回数、費用などをよく確認しましょう。