本コラム「ソシキビト」では、これまで様々な「組織サーベイ」を紹介してきました。年に1回程度、時間をかけて行う「エンゲージメントサーベイ」や「従業員満足度調査(ES調査)」。また、簡易的なアンケート調査を短いサイクルで繰り返す「パルスサーベイ」がその中心です。
そして、今回新たに紹介する組織サーベイが「モラールサーベイ」です。モラールサーベイとは、従業員と組織のどのような部分を測定する調査なのでしょうか。本記事では、その意味や目的、内容を中心に、導入する際のポイントを解説します。
【本記事で得られるモラールサーベイの情報】
・意味や目的
・効果、メリットデメリット
・他の組織サーベイとの違い
・導入のポイント
・実施方式と質問項目、質問例
・企業の導入事例
モラールサーベイとは?
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モラールサーベイとは、どのような組織サーベイなのでしょうか。はじめに、モラールサーベイの意味や目的、内容を解説します。
モラールサーベイの意味
モラールサーベイとは、従業員が抱える「意識」を測定・分析し可視化する組織サーベイのことです。「士気」や「意欲」を表す「モラール:morale」と、測定・調査を表す「サーベイ:survey」を組み合わせて、「モラールサーベイ」と呼ばれています。
モラールとは、従業員一人ひとりが自分の役割を認識し、組織としての目標達成に向け、情熱を持って取り組む姿勢を表します。
モラールサーベイの実施頻度は、年に1回程度。アンケート調査によって、仕事や組織に対する従業員の意識を測定します。調査で浮かび上がった問題から課題を設定。改善プランを実施することで、従業員のモチベーションやエンゲージメント、満足度の向上を図り、組織としての士気を高める取り組みがモラールサーベイなのです。
モラールサーベイの目的
次に、モラールサーベイの目的を解説しましょう。
【モラールサーベイの目的】
・従業員の本音の把握
・組織課題の明確化
・職場環境の改善
・従業員のモチベーションアップ
モラールサーベイは、アンケートによる意識調査です。アンケートに回答してらうことで、従業員の「本音」を把握できます。従業員の本音からは、組織が内包する課題が明確になるでしょう。
次のステップは、課題改善プランの立案。実行に移すことで、職場環境の改善につなげます。改善された職場環境の中で、仕事に取り組む従業員のモチベーションもアップするでしょう。
モラールサーベイの本来の目的は、第二次世界大戦中に米軍兵士の士気高揚を図ることでした。戦後それが、ビジネス界で普及し発展。日本においては、1955年に日本労務研究会が「NRK方式」のモラールサーベイを考案し、その後は「厚生労働省方式」など多くの方式が開発され今日に至っています。
モラールサーベイの効果・メリット
モラールサーベイには、どのような効果・メリットがあるのでしょうか。ここでは、それを明らかにします。
【モラールサーベイの効果・メリット】
・社内コミュニケーションの活性化
・適材適所の人材配置
・定着率の向上
・生産性の向上
モラールサーベイに限らず、組織サーベイによって従業員の意見を吸い上げることには「コミュニケーション効果」があります。自由闊達な意見の交換は、社内コミュニケーションを活性化させるでしょう。多様な意見と調査結果をすり合わせて、適材適所の人材配置が可能になります。
適材適所の人材配置は、従業員の定着率を向上させます。このように、モラールサーベイによる職場環境の改善は、組織全体の士気を高め、仕事の生産性を向上させていくのです。
関連記事:従業員のモチベーションを向上させる方法
モラールサーベイと他の「組織サーベイ」を比較
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モラールサーベイをはじめとする組織サーベイには、いくつかの種類があります。
【組織サーベイの種類】
・エンゲージメントサーベイ
・従業員満足度調査(ES調査)
・パルスサーベイ
モラールサーベイと他の組織サーベイは、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、その違いを比較します。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイとは、仕事に対する「思考面・情緒面・行動面」、この3つの側面における、従業員の関与の度合いを測る調査のことです。仕事と組織に対する従業員の結びつきの強さを、定量的かつ定性的に可視化します。
エンゲージメントサーベイは、従業員や組織が抱える課題を早期に発見し、改善プランの立案につなげます。実施は、年に1回程度。従業員エンゲージメントの向上や組織のパフォーマンスの向上、そして従業員の離職防止を主な目的とする組織サーベイです。
関連記事:エンゲージメントサーベイとは?
従業員満足度調査(ES調査)
従業員満足度調査(ES調査)とは、職場における従業員の「満足度」を測る調査のことです。アンケートによって、仕事をする上での働きやすさや人間関係、給与や福利厚生、ワークライフバランス対する満足度を、定量的かつ定性的に可視化します。
従業員満足度の英訳である、「Employee Satisfaction」の頭文字をとって「ES調査」とも呼ばれています。実施頻度は、年に1回程度。従業員と組織の活力を映し出す「経営指標」として、また従業員と組織の今の状態を把握する「健康診断」として活用されている組織サーベイです。
関連記事:従業員満足度調査(ES調査)とは?
パルスサーベイ
パルスサーベイとは、従業員の心情や満足感を週に1回や月に1回、場合によっては数日に1回といった短いサイクルで測定を繰り返す調査のことです。脈拍(パルス)検査のように、従業員の状態を頻繁に調査(サーベイ)することから「パルスサーベイ」と呼ばれます。
パルスサーベイの主な目的は、従業員と組織が抱える問題の早期発見、課題の設定と改善、従業員の満足度とエンゲージメントの向上にあります。環境の変化が激しい時代にあって、従業員のリアルタイムの状態をタイムリーに捉え、改善プランにつなげていく組織サーベイです。
関連記事:パルスサーベイとは?
モラールサーベイのデメリット
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多くの効果やメリットを持つモラールサーベイですが、デメリットもあります。ここでは、モラールサーベイのデメリットを解説します。
【モラールサーベイのデメリット】
・様々なコストが発生する
・実施するには相応のノウハウが必要である
・回答が現状を正しく反映しているとは限らない
・制度設計を誤ると成果が得られない
モラールサーベイを実施するには、様々なコストが発生します。実施担当者をはじめ、回答する従業員にかかる人的・時間的コストは、決して小さくはないでしょう。外部の会社に委託する場合は、委託費用が発生します。実施するには、相応のノウハウが必要です。
また、せっかく導入しても、集まった回答が現状を正しく反映しているとは限りません。なぜなら、回答の際に遠慮や忖度が働く恐れがあるからです。このように、モラールサーベイは制度設計を誤ると成果を得ることができません。そればかりか、時間をとられる従業員に不満を持たれる可能性すらあるのです。
関連記事:従業員の満足度が高い職場環境とは?
モラールサーベイを導入する際のポイント
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前項でみたようなデメリットを持つモラールサーベイですが、どのようなことを意識して実施すれば良いのでしょうか。ここでは、モラールサーベイを導入する際のポイントを解説します。
【モラールサーベイを導入する際のポイント】
・実施目的を明確にする
・匿名で実施する
・継続的に実施する
・実施後は必ずフィードバックを行う
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
実施目的を明確にする
モラールサーベイに限りませんが、組織サーベイで効果をあげるには、実施目的を明確にする必要があります。まずは、「何のために実施するのか」を明確にしましょう。実施目的の具体例をあげます。
・従業員の離職を防ぐ
・仕事に対するモチベーションを高める
・生産性を高めて業績をアップする
・働きやすい職場を作る
・組織の問題点を明確にする
目的が明確になったら、従業員への周知を徹底します。十分に説明を行い、目的を共有しましょう。それと同時に、モラールサーベイに対する理解を深め、従業員に納得してもらうことが重要です。
匿名で実施する
モラールサーベイは、匿名での実施をおすすめします。なぜなら、従業員の本音を引き出せなければ、実施する意味がないからです。多くの従業員は、アンケート調査に慣れていません。中には、「初めて」という従業員もいるでしょう。
そのような状況の中では、回答が「バレる?」「筒抜け?」といった不安を持つ従業員、回答に「遠慮や忖度」が働く従業員がでてきてしまうのです。これでは、従業員の本音を引き出すことは難しいでしょう。この課題をクリアし、回答する従業員の安心感を高めるためにも、モラールサーベイは匿名で実施する方がベターといえます。
継続的に実施する
モラールサーベイは、継続的に実施することが重要です。組織サーベイは、従業員の成長と組織の活性化が最終目的です。モラールサーベイによって、組織がどう変わったのか「状況の検証と分析」が欠かせません。そのためには、モラールサーベイを継続的に行い、従業員と組織の変化を確認する必要があるのです。
「従業員の意識は変化したのか」「改善は進んでいるのか」「モチベーションは高くなったのか」など、定期的に確認していきます。モラールサーベイは、定期的かつ継続的に実施する。導入する際の重要なポイントです。
実施後は必ずフィードバックを行う
モラールサーベイの実施後は、必ずフィードバックを行いましょう。実施担当者や上司が調査結果を見て終了では、全く意味がありません。時間をかけて回答した調査結果は、回答した従業員も気になるものです。モラールサーベイの目的は、従業員の士気を高めることなのです。
そのためには、従業員へのフィードバックが不可欠。実施後は、フィードバックを丁寧に行い調査結果の共有を図りましょう。その後は、必要に応じて従業員をフォローアップしていく。これが、従業員の士気を高めると共に、信頼関係の構築につながるのです。
関連記事:組織を活性化するには
モラールサーベイの実施方式と質問項目
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モラールサーベイには、様々なやり方があります。ここでは、代表的な2つの実施方式と、それぞれの質問項目について解説します。
【モラールサーベイの実施方式】
・厚生労働省方式
・NRK方式
詳しく見ていきましょう。
モラールサーベイ「厚生労働省方式」
厚生労働省方式は、一般社団法人日本労務研究会が考案したモラールサーベイです。1957年にリリースされ、「厚生労働省方式 社員意識調査(NRCS)」とも呼ばれています。厚生労働省方式は、従業員300人未満の中小規模の企業を対象に設計されています。
「仕事・給料・上司」といった、企業全般の項目について、従業員がどのような意識を持っているのかを調査・分析。組織課題の改善、また従業員満足度の向上が主な目的です。サービス業に特化した、「NRCSⅡ」という方式も用意されています。では、質問項目を、NRCSとNRCSⅡに分けて紹介しましょう。
【厚生労働省方式の質問項目】
NRCS:5分野10領域39問の質問項目で構成
・経営方針
・組織命令系統
・コミュニケーション
・労働条件
・仕事のやりがい
NRCSⅡ:5分野10領域40問の質問項目で構成
・経営への信頼
・上司への信頼
・顧客満足
・労働条件
・職場生活満足
モラールサーベイ「NRK方式」
NRK方式も、厚生労働省方式と同じ日本労務研究会が考案したモラールサーベイです。NRK方式は、従業員300人以上の大規模な企業を対象に設計されています。これまで延べ6,100社、500万人を超える実績を持ち、膨大なデータベースを基に調査結果の分析が可能です。
調査は、マークシート式を採用。簡単に回答できる質問に答えてもらうことで、従業員の働く意欲を可視化します。オプションも豊富に用意されており、各企業の実情に応じた調査が可能です。では、具体的な質問項目を紹介しましょう。
【NRK方式の質問項目】
NRK:5分野17領域95問の質問項目で構成
・労働条件
・人間関係
・管理
・行動
・自我
モラールサーベイの具体的な質問例
この項の最後に、モラールサーベイの具体的な質問例を紹介します。
【仕事に取り組む意欲や意思に関する質問】
・仕事に集中していると時間が経つのが早いと感じる
・自分に求められている能力を把握している
・仕事を遂行する上での知識やスキルを身につけている
・目標達成を意識して働いている
・今の仕事に働きがいを感じている
【仕事における満足感や達成感に関する質問】
・自分の意見やアイデアが職場で受け入れられている
・目標を達成するための役割を与えられている
・上司や同僚から称賛され励まされる機会がある
・業務を遂行するために必要な設備やツールが用意されている
・経営層や上司は定期的に目標達成の進捗管理を行っている
【組織に対する意識や姿勢に関する質問】
・自分や部署のメンバーは会社の指針や戦略を理解している
・今の会社を家族や知人にすすめることができる
・自分の会社に誇りを持って働いている
・社内に尊敬できる上司や支えてくれる仲間がいる
・上司や同僚と十分なコミュニケーションがとれている
>> 本記事「ソシキビト」を運営するリアルワン株式会社では、モラールサーベイにも活用できるエンゲージメントサーベイの質問テンプレートをご用意しています。ご希望の方は、コチラからダウンロードください。
モラールサーベイを活用する企業の導入事例
![分析](https://www.realone-inc.com/work/wp-content/uploads/2023/01/pixta_29310149_L-scaled-e1674633393438-1024x397.jpg)
それでは、モラールサーベイを活用する企業の導入事例を紹介しましょう。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧富士ゼロックス)は、組織課題の早期解決と適切な経営方針策定のため、1978年から自社開発のモラールサーベイを導入しています。
質問項目は、「仕事のやりがい」や「職場での働きがい」など、「コア・モラール」と呼ばれる5項目を中心に構成。関連会社と共有する価値である、「私たちが大切にすること」に対する意識を測定し、従業員の愛社精神や貢献意欲、やる気を高めることに成功しています。
最近は、自社で蓄積したノウハウを基に、外部に対するコンサルティング業務を展開。モラールサーベイを、外に広げる取り組みにも力を入れています。
株式会社日立ソリューションズ
株式会社日立ソリューションズは、半年に一回という頻度でモラールサーベイを実施しています。調査の対象は、課長級以下の従業員。モラールサーベイで、表面化していない問題点を吸い上げ、不満や悩みを抱える従業員のサポート体制の構築に活用しています。
調査結果は、組織全体の改善に展開。従業員に対するフィードバック、改善プランの立案、経営方針の策定など、幅広く活用しています。モラールサーベイによって、目に見えない問題点の早期把握が可能になり、従業員のサポートをタイムリーに行える体制作りに成功しています。
イオンフィナンシャルサービス株式会社
イオンフィナンシャルサービス株式会社では、職場の環境改善の一環としてモラールサーベイを実施しています。実施は一年に一回、全従業員が調査対象です。経営ビジョンの理解度、社内コミュニケーションの活性具合について、5段階のアンケートに回答する方式を取り入れています。
実施後は、調査結果と問題点を社内で共有。「組織の実情はどうなのか」「何が問題なのか」「どのようにすれば改善できるのか」について時間をかけて分析し、課題解決プランを立案・実行しています。モラールサーベイによって職場環境が改善し、従業員の仕事に対する意欲を高めることに成功しています。
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モラールとモチベーション、モラールサーベイとエンゲージメントサーベイの違い
![資料](https://www.realone-inc.com/work/wp-content/uploads/2023/02/pixta_16549385_M-e1677305890786-1024x514.jpg)
今回は、モラールサーベイについて解説しました。モラールとは、聞き慣れない言葉だったかもしれません。 最後に、混同されがちな部分について整理しておきます。
モラールとモラル、モチベーションの違い
モラールと似た言葉に、「モラル:moral」があります。モラルは、「道徳や倫理」と訳される言葉です。一方モラールは、本文で述べた通り「morale」と表記し「士気や意欲」と訳されます。2つは、全く違う意味の言葉です。
モラールと同じような意味で使われる言葉として、「モチベーション」があります。2つは重なる部分も多いのですが、モチベーションは目標達成を目指す「個のエネルギー」を表す言葉です。「個の動機づけ・やる気」と言い換えても良いでしょう。
一方モラールは、目標達成を目指す「エネルギーの結束」という意味合いで、集団の「団結力・結束力」といったニュアンスを含む言葉として使われます。
モラールサーベイとエンゲージメントサーベイの違い
また、モラールサーベイと混同されがちなサーベイに「エンゲージメントサーベイ」があります。この2つのサーベイは、極めて良く似ていますが、成果の状態や達成プロセスが若干違います。
モラールサーベイは、「モラール」という言葉が含むニュアンス通り、調査によって従業員のモチベーションをアップさせ、組織全体の士気や意欲を向上させる取り組みです。一方エンゲージメントサーベイは、調査によって従業員の組織に対する貢献意欲や結びつきを高め、組織を活性化する取り組みです。
2つのサーベイは、成果の状態や達成プロセスに違いはあっても、仕事や組織に対する従業員の「情熱・コミットメント」を高める点では変わりありません。
リアルワンはエンゲージメントサーベイを提供
![女性スタッフ](https://www.realone-inc.com/work/wp-content/uploads/2023/01/25665797_m-e1674838664394-1024x435.jpg)
本記事を運営するリアルワン株式会社は、モラールサーベイではなくエンゲージメントサーベイを提供しています。その理由は、次の通りです
- ビジネスの概念としてはモラールよりエンゲージメントの方が新しい
- リアルワンのエンゲージメントサーベイは最新の組織心理学に基づいている
リアルワンのエンゲージメントサーベイについては、「コチラの記事」をご覧ください。
リアルワンは、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「エンゲージメントサーベイ」や「従業員満足度調査(ES調査)」で、従業員の成長と組織の活性化をサポートします。組織サーベイの導入を検討されている担当者の方は、100万人超の利用実績を持つリアルワンにぜひご相談ください。